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第3話

 光が目を覚ますと、体をふわふわで暖かな毛布でまるで赤子のように丁寧に包まれていた。窓からは冬の太陽が顔を出し、部屋の奥まで指を伸ばしていた。  カチャカチャと音を立て、何やら人の動く気配がする。光は薄く目を開けると、音のする方に顔を向けた。 「あ、光起きたかい? いま朝食が届いたところだよ。ウェイターにリビングまで運んでもらったんだけど、さすがに寝室に入れるわけにはいかなかったから適当に並べてみたよ。どう? 食べたいものある?」  アンジェロが冬の日差しのような笑顔で光に語りかける。朝からよくしゃべるなぁと思いながら光はベッドのうえでむくりと起き上がった。まだしっかりと開ききってない目でテーブルのうえにこれでもかと並べられたさまざまな朝食を見て少し気持ち悪くなった。 「光は朝ごはんは和食派? 洋食派?」 「……食べない派」 「えぇー食べないと元気でなくない?」  普段は起きてすぐ移動車に乗り込んで仕事場に行く。着いたらメイクをしてもらって撮影やら取材やらを行うのだ。なのでそのまま夜までお菓子しか食べないこともよくあった。 「ホットケーキ」  光がうわ言のように小さい声で告げる。そのわずかな訴えにすばやく反応したアンジェロはベッドの方へと近づくと端に腰かけて耳を傾けた。 「ん? もういちど言ってごらん」  ずいっと目の前で微笑みながら文字通り耳を傾けているアンジェロに、少し遠慮気味に光はもういちど口を開く。 「ホットケーキ食べたい」  すると、アンジェロは目尻を下げた優しい笑みをそのまま溶けてしまうんじゃないかというほど深めて言った。 「すぐにルームサービスを頼もう」  光は思わず、手元に握っていた毛布の端を顔の位置まで上げた。そんな顔を隠す素振りを見せる光の頭を、アンジェロはポンポンと撫でるのだった。  ふわふわの毛布の下で、頬を赤く染めた苺が瞬きの数を増やしていた。  光は自分の声が届いたことが嬉しかったのである。

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