8 / 19

第8話

 ニューヨークはマンハッタン、ミッドタウンの西部を闊歩する。数々のホテルが建ち並び、超高層のオフィスビルが密集するエリア。観光客とビジネスパーソンが交じり合う活気あふれる街並みだ。  こういうときは業界人が集まりそうなところに行く。NYなんて有名人だらけだし。光はエンタメの聖地に降り立ったそのときから生粋のエンターテイナー思考でずんずんと道を進み横断歩道の赤信号でようやく立ち止まるのだった。 「とりあえず日本食レストランにでも行ってみようか」 「そうだなー誰かしら繋がりのある人と出会えるかもな……って、なんで俺までついて来なきゃなんなかったわけ?!」  チャコールグレーのロングコートを翻して道端で怒鳴りつける人物がいた。 「え〜だって景人こっちに知り合い多いでしょ? その人脈ちょいと貸してよ」  その厳つい怒声にも全く怯むことなく飄々と言ってのける人物も一名追加される。そんなアジア人二人を避けるかのように黄色いタクシーが通り過ぎた。 「高くつくぞ」 「金ならある」  ったく仕方ないなといった風で彼は光にお供することを承諾した。なんだかんだ身に馴染んだ世話焼き体質が発動して面倒なことに巻き込まれてしまう彼、景人は若干30歳で独立し、フリーのスタイリストとして数々の有名人から信頼を得ているカリスマである。光もよく仕事やらプライベートやらでも景人を呼びつけてはスタイリングしてもらうこと10年。仕事相手というより旧友みたいなもんだ。 「ファッション業界の人ならこっちじゃなくて5番街の方が多いと思うぞ」 「おお、なるほど! さっすが売れっ子スタイリスト!」  景人の肩を思いっきり叩き、揶揄う光。似せ紫のタックパンツのポッケに手を突っ込み、モデル顔負けの立ち姿で信号が変わるのを待つ景人。彼はグレーアッシュに染められたプードルヘアーの前髪越しに光へとジト目を向けるのだった。 「じゃあさっそく向かおう!」  ずんずんと信号が変わった瞬間に踏み出す光。それを長い腕の面、全体でガシッと制止する景人。 「そっちじゃない、逆方向だ」

ともだちにシェアしよう!