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第10話

「ソイミルクだよ」 「よく分かってんね」  光は当たり前のようにエコな素材でできたカップを受け取り、手のひらから指先まで温める。  そこら辺にぽんっと現れた移動販売でも豆乳があるとは、さすがNY。感心しながら小さく口を付けた。  さて、ここからどうやってアンジェロの手がかりを見つけるか。手当たり次第ブランド店に入るわけにもいかないし、かといって彼を知ってそうな人物へのツテがあるわけでもないし、次にどう行動すべきか光にしては珍しく慎重になっているのであった。  すると、同じくホットミルクをちびちび飲んでいた景人がおもむろに口を開く。 「そういえば、10年くらい前に参加したレセプションパーティーで俺に話しかけてきた人がいたんだよな」  この時期のイルミネーション装飾って夜は華やかだけど、昼間の裸電球の列はちょっと恥ずかしく感じるんだよな。なんて光はブランド店の入口を壁に沿って這っている電飾に同情しながら耳をそばだてる。 「俺はアシスタントとして付いてきてただけなのに直で挨拶してきてなんか根掘り葉掘り聞かれた。あれはちょっと気味が悪かったな」  景人は体を縮こませ震わせるようにして悪寒を走らせた。 「景人、ミステリアスボーイを演出するのに必死だもんねぇ」 「そうそう俺のアイデンティティ……って演出って言うな! 俺は根っからミステリアスだ」  いや本当に謎めいている人は自分から根っこの部分が何であるか教えないだろう、と思う光であった。 「で? それが何の関係があるの?」 「そのパーティー、ミラノで行われたのになぜかニューヨークの人が俺に話しかけてきたんだよね」  別に国際的なファッション産業の拠点であるミラノに海を越えてやって来る業界人がいても不思議ではない。なのになぜ景人は違和感を持っているのだろうか。 「へぇーえらく見込まれたもんだね」 「ああ、アシスタントの俺に声かけてくる人なんてそんなにいるわけ無いよな。なのにその人にやけに執着されて、俺なんか目をつけられるようなことしたのかなって」 「え?」  なんとも気味が悪い。単なる他人の空似なのかもしれない。しかし、空気の変化に敏感な景人が震えるくらいの不穏な影を被った人物との遭遇だったのだ。

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