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こぼれ話(あの日の夜の話)

 白いバスタブの中にお湯を張りアンジェロが座る脚の間に光は身体を預けていた。  背中に当たる温度はちょうどいい湯加減よりも、たぶん熱い。  アンジェロの手が滑らかな湯をすくい、優しく光の肩にかける。湯が滑り落ちる度に光の肌を火照らせるのは果たして湯の仕業なのか。  そこが赤く色づき始めた実のようで、甘くするためにはどうしたらよいのかと考えてみる。きっと色づくだけではダメなのだ、愛情をめいいっぱいかけ、時には下から栄養を注入しないといけない。するとなかまでとろけるような甘さで人を誘惑する食べ物になる。  それなら手をかけて育ててみようとアンジェロは動いた。  ちゅ……と音を立てて光の肩にキスを落とす。温まってきたそこを染めるように何度も口づける。 「アンジェロ……くすぐったいよ」  柔らかく生々しい感触に光は思わず身をよじる。 「じゃあ、ここは?」  すると今度は光の首筋に唇を当てて舌がまるで蜜の滲んだ雫を舐め上げるように下から上へと動いた。 「ん、そこもダメっ」  ここもダメなのか、と残念に思うアンジェロはふと目の前に差し出されていたむき出しの後ろ首にかぷっと噛みついた。その瞬間、今までの反応が嘘のように光の身体が飛び跳ねた。 「あっ!!」 「え、ここ弱いの?」 「ち、ちがっ」  ちゅっちゅっと繰り返し落とされる唇。  広い浴室に、喘ぐ声。  思ってもみなかった甘い響きに気を良くしたアンジェロはそれから執拗にそこを責め立てるようになるのだった。  苺のヘタの根元は敏感なのである。

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