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第5話

 瑞帆が楽屋に入るとずーんと机に突っ伏した優我がいた。いつもならおはようと冷静にその月光のように儚い顔を向けて、遠慮がちに乗った花弁のような唇から声を出してくれるというのに。  なぜだろう、こうやって優我が沈んでいるときは決まってあいつ絡みであることをたったひと月という短い付き合いのなかでも嫌というほど思い知る。 「おはよう、優我。なんか気分悪そうだけど大丈夫?」  それでも瑞帆は目の前で苦しそうな顔をしている優我を無視することなんてできないのであった。  優我は顔を上げ、瑞帆の方を向くとその金環日食のように大きな目から雫をこぼしそうになりながらふるふると小さく頭を揺らすのだった。 「大丈夫。なんでもない」  いつもそうだ、優我は自分がツラくても断固として弱音を吐かない。男気あふれるその姿勢は後輩たちからは慕われるが、チームメイトとしては相談くらいしてくれてもいいのにと、そう思わずにはいられない。 「そう? なんかあったら遠慮なく言って、俺側にいるから」  そうして瑞帆は言った通り、その日の収録の間ずっと優我のそばを離れなかった。いつもと違うと言えば、優我に抱きつくことなくずっと彼の腰を軽く支えるように寄り添っていたことぐらいだろうか。その様子に番組を見たファンたちはまるで長年連れ添った老夫婦のようだと口々につぶやくのだった。 「ただいま」  誰もいない部屋に木霊する自分の声に、優我は薄ら笑いを浮かべて自室へと向かう。部屋に入った優我ははぁ……と息を吐き床に膝をついてベッドへと突っ伏した。今日はいつも以上に疲れた。腰の辺りに常に違和感を抱えながらの仕事は優我にはかなりこたえた。それでも隣に感じる柔らかな存在に安心感を覚えたのは今日が初めてだった。  ぶるっと悪寒のする体を縮こませ側にあった毛布を引き寄せたところで優我は意識を手放すように眠りについた。  それがよくなかったのかもしれない、気がついた頃には窓から入る光は太陽のそれとは違った趣を演出していた。ふっとこぼした自嘲から、もれた息が思ったよりも熱くて優我はさすがにこれはヤバいか……と悟る。しかし、重い頭と体のせいでなかなか思うように動けない。ふと、目の端にスマートフォンが留まり、ぼんやりと湯あたりしたような頭で手を伸ばす。今まで強がっていた分、タガが外れたのか急に心細くなる。優我は朦朧としてきた意識のなか、指をスライドさせメッセージを送ったのだった。

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