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第6話

 ひんやりとした感触を額に感じる。優我は夢朧のなかでうっすらと目を開けた。明るい? 部屋の電気は付けていなかったはず、なのになんでだ? 優我は理解が追いつかず、少しだけ首を右へと傾ける。するとぼんやりと目に入ってきたのはなにやら手元で絞るような動作をする人影。それはわずかな視線の存在に気づいたのか、優我の顔へと近づいてきた。 「気づいた?」 「おまえ……」  なんでここに? と言いたげな優我に対しそれは静かに声をかける。 「優我、つらそう」 「なんでお前がここにいるんだよ、瑞帆」  優我を見つめる瑞帆の顔が段々と明瞭になってくると、その表情が九薬を噛み潰したように受容し難いものに見えた。 「メッセージくれたから」 「はっ?」  優我は側にあったスマホを手に取り自身の目で確認する。それを見留めると、はぁ……今日一番のため息をついた。 「部屋にはどうやって入ったんだよ?」 「開いてた、鍵、物騒」  お前は単語でしか話せないのか、と言いたくなるような喋り方をする瑞帆はどこか心ここにあらずである。 「どうした? 元気ないな」  優我にそう問われ、瑞帆はびくっと肩を震わせる。 「だって……俺、こんなになるまで優我のことほっといた……俺、恋人なのに」  はっそれが理由かよ、と優我は鼻で笑った。お前そんなん口だけで交わした言葉遊びみたいなもんだろ。ガンガンに響く頭の痛さからか、今はそんなのどうでもいいだろと優我の頭は正直そう思った。なのに、なのに瑞帆が今にも泣き出しそうな顔で見つめてくるから。  優我は口に出すことなく、彼の後ろに浮かぶ窓を透かして見る。その夜、その場所からは月は見えなかった。

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