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第7話
金魚鉢の奥に瑞帆がいる。
優我から唐突に届いたメッセージを見て表情が固まった。文字通り、エサをあげようと必死に走ったにも関わらず体ごと割れ砕けるような金魚共々の顔でスマホを見つめた。
なんで、気づかなかった。なんでこの瞬間彼の側にいない。瑞帆は自分を責めた。後悔とともに消えてしまいそうになりながら、それでも脚を動かし走った。自分が出せるを超えて全速力でそれでも目の端で街の流れが見える。これじゃダメだ、全然ダメだ。俺は恋人失格だ、自分が壊れてでも側にいなきゃダメなのに。風を切ることはできても、風になれないもどかしさに苛まれていた。ごめんね、ごめんなさい。
謝りながら、マンションのドアを開ける。靴を脱ぐのもそこそこに、廊下の床板を滑るように踏み込む。それでも着いたとき、ぐったりとベッドに突っ伏す優我を発見したときは心臓がぐっと冷たくなった。
「優我!」
瑞帆は優我を抱きかかえ、ベッドに横たえる。側にあった毛布をかけてやり、それでも寒そうにしている様子を見て辺りを探るように見渡す。窓際の机と椅子、そこに掛かるMA-1を手に取った。優我へとふわりとかけてやる。これで幾分かはマシであろうことを確認し、瑞帆は適当な容器とタオルを見つけた。水で濡らし絞ると、優我の額に乗せる。
どちらともなく熱い息がもれたそのとき、優我の目が薄らと開くのを感じた。
見つめるその目は、何で来た。そんなことを言いたげな視線で、瑞帆の不安を煽る。
優我の額に乗ったタオルを替える振りをしてその肌に触れる。ただその一瞬の繋がりでさえ、瑞帆にとっては安心感へと変わるのだった。
「優我、喉は渇いてない?」
「カラカラ」
「これ飲んで」
瑞帆はそう言うと、冷蔵庫を漁って出てきたであろう水を取り出し、優我に渡した。
「飲ませて」
「え……」
瑞帆の蓋を開ける手元がピタリと止まった。優我の申し入れに少しだけ戸惑った瑞帆であったが、水をぐいっと自身の口に含む。それを優我の視線になぞられながら、花弁のような口許へ繋げた。流し込む水はすでにぬるく変化し、二人の間の水たまりとなって泥を飛ばした。
「おい、お前らなにしてる」
落ちた声に沈んだ靴はグシュグシュに濡れる直前だった。
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