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第8話

「お前ら、何してんだよ」  部屋の入り口、細めの眉を内側に寄せた顔で仁王立ちする駆の姿があった。 「駆……」 「帰ってきたんだ」  今更何しに来たと言わんばかりの瑞帆の声色に、冷静さを取り戻した優我は慌てる。 「いや、これはそのっ」  うっ……ダメだ起き上がれない。体が言うことを聞かない優我はベッドに横たわりながら視線だけで瑞帆に助けを求める。  その様子に駆は焼け石が喉元を押し開き、はらわたをじわじわと進行するような気分になった。 「チッ」 「優我が熱出したから看病してたんだよ」  優我は彼の苛立ちを感じ取り、さらに焦る。しかし、瑞帆は平然と言い切るのだった。 「へぇーそれが看病? お前、それで満足なのかよ」  そう言うと駆は優我が張り付けられているベッドへと大股で近寄り、勢いのまま優我に跨った。  次の瞬間、駆が優我にキスをする。上からの気遣いのない強引なキスが、ぶつかり合う歯と歯の音を増幅させる。駆は優我が起き上がれないのをいいことにさらに口づけを深くした。歯列をなぞり、無理矢理口を開けさせ、突き入れられた舌で優我の熱い舌をぬるりと絡め取る。絶対に逃さない。避けようとしても先を読むように捕まえに来る、優我は口内を侵されながら入ってくる唾液を必死に嚥下した。 「ゴクッ……はぁはぁ、はぁ……」  駆の独善的な動きに優我は疲れ果ててしまった。 「瑞帆っ、今日はもう、帰れ。俺大丈夫だから」 「……」  言葉を失っていた瑞帆、優我はその表情を見て唖然とした。長年の友の善がる様子を嫌だと言いながら盗み見ているような興奮の芽吹きを感じたからだ。  目を見張るような駆の行動を、毛羽《けば》のような瑞帆の欲望を優我は身体にのしかかる重さで腰を疼かせていた。  口を離した駆が顔を上げて言い放つ。 「どこの誰だか知らねぇけど、これ、俺んだから」  瑞帆は立ち上がり、細々と出口に向かって足を運ぶ。その後ろ姿は消え入りそうなほど線がぼやけていた。 「ん! 薬。買ってきた」  瑞帆が帰り、二人になった間で腕が伸びてくる。受け取ったレジ袋のなかには熱冷ましの薬とスポーツドリンクが入っていた。  え、なんで……はっとしてスマホを手に取る優我。  開いた画面のその白さの上には、駆へと送った“つらい”の3文字が映えていた。

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