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1. 向かいゆく魂
「ノーラッド、そろそろ日が暮れるわ。早くこの峠をこえないと!!」
「…分かっている。うるさいから声を出すな」
ここに、放浪を続ける一人の青年。彼は使徒である
普通、使徒と言えば誰にでも持つことの叶わぬ特別な力を有し、人々から尊敬と憧憬の眼差しを受けるものだが………むしろこのノーラッド・ガルネイドはそれと離れた存在にいた。
武闘場 で行われる武闘会にも参加せず、お堅く王族の護衛をしているわけでもない。ただ、目的があるかないかも分からぬ放浪の旅を続けているだけ。ただひたすらに、毎日を歩き続けているだけ。
なにか変わっていることと言えば、肩に水の妖精をのせていることくらいであろうか。
全身を漆黒のマントが覆い、風に歯向かいながら今晩の目的地までを歩く。目的地、と言ってもなにか特別な用があるわけではない。…泊まるのだ。
野宿が嫌な訳ではないが、この山あいだといつ獣に襲われてもおかしくないし、なによりこの季節に野宿で一晩を越すなど自殺行為に近しい。
「ノーラッド!」
「……今度はなんだ……」
「あれみて、村よ!」
「………あ、れは…」
___どうやら今晩の目的地に到着したようである。
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