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6. 懇願
「おいダナ!! お前、自分が何したかわかっ…」
「わかってるよ、ダグラス。…大丈夫だから」
ノーラッドとリリマが出ていき、部屋にはダグラナとダグラスの2人だけとなった。
突然ダグラナの出した答えに納得のいかないダグラスは、何とかして引き留めようとダグラナと論争になっていた。
「なんだって急に、あんな見ず知らずの野郎と旅なんて出るんだ! 1人で行くんじゃなかったのか?!」
「全く知らない訳じゃない。僕の恩人だよ。…人助けをする人が悪い人な分けがないよ」
「…! 今日、お前を襲った奴だぞ!!!」
「っ、大丈夫って言ってるでしょう?! 旅に出るのは僕だ!! ダグラスには関係ないよ!」
「……………っくそ。なぁダナ、もうやめようぜ…。次いつ会えるかわかんねぇし、こんな別れ方…したくねぇ」
折れたダグラスが冷静さを取り戻す。珍しく声を荒げていたダグラナもそれに同意する。
「…そう、だね。ごめん、なんか……。でもダグラス、わかってよ! ノーラッドは悪い人じゃない、絶対に! さっきは僕のフェロモンに当てられただけだよ!!」
部屋を照らしていたろうそくの灯りがかすかに揺れる。
それが心配だって言ってんだよ……。とダグラスは小声で呟くが、ダグラナの耳に届くことはなく。
…そう。もう1つの懸念材料は、ダグラナがΩ だということ。それもつい先ほど、発情期の入ったのが確認されたばかりだ。
世の中には発情抑制剤というものが存在する。
それでΩ の発情はいくらか抑えらると聞くが、やはりヒートを起こしたα には敵わないとも聞く。
さっきの件、ノーラッドがヒートを起こす直前でリリマが現れたことによって事は未然に防げた。
次、いつ発情期になるかわからない。なったとしても、その場にリリマか、他の誰かがいるとも限らない。
そんな状況下の中でα とΩ が旅をする。
Ω にとっての自殺行為といっても過言ではない。
「……ダナ。でも…」
「ダグラスごめん、出てって。これ以上、君に説得されても僕の意思は変わらないよ。……諦めて」
「……っ! そう、かよ…っ!!」
一瞬、苦しそうな顔をして、ダグラスはダグラナの部屋から出ていった。
「ダグラス……、ごめんね。僕、分かってるよ。君が僕のこと誰よりも心配してくれてるの。
君が、ずっと僕のこと好きなの、も。
……ごめんね、ダグラス…………」
ろうそくが、静かに消えた。
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