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10. 目的地への誘い

「でもノーラッド。どうするのよ、こんなにちっちゃかったらダグラナ乗れないじゃない」 宿に着き、一段落ついたところでリリマが口を開く。 確かに……ごもっともすぎる。ドラゴンは聖獣の中の聖獣、出会えることなまずない、とまで巷で言われる存在。しかし、だからと言って幼体がいきなり成体へとなることはあり得ない。ヒト同じように成長というものがある。 ダグラナがもらってきたのはたまごから孵ったばかりの幼すぎるドラゴン。 ……正直なところ、未だ生態のよくわかっていない黒血歌竜(ブラッディ・アリア)の幼体、それを研究機関に持ち込めばどれだけの謝礼が出るかわからない。 その謝礼金で新たに成体のドラゴンを買う…という手もありなのだが。 「大丈夫だよリリマ。ドラゴンとかの珍しい種類ってよく分からないけどさ、そんなの関係ないよ」 ダグラナの腕の中にうずくまる黒血歌竜(ブラッディ・アリア)を撫でながらダグラナが言う。 「僕、大きくなるまでちゃんと面倒みるから」 ニコッと笑いながらリリマとノーラッドを見る。 それを見たノーラッドが、何を思ったか口を開く。 「……ドラゴンっつーのはな。人間の子供と一緒で、育てられた通りに育つ。元から躾のなってる成体のドラゴンは新しい主人に慣れさえすればそこまで面倒じゃねえ。だが幼体となったら話は違う。一から何もかも…お前が教えるんだ。…………できるか?」 ダグラナの瞳をまっすぐに見つめてノーラッドが問いかける。 だが何を言われようとダグラナの答えは決まっている。 「もちろん。当たり前じゃないか」 「……フフッ。面倒を見るのは大きくなるまでかしら?」 「う、ううん! 大きくなってからもちゃんと僕が面倒みるよ!!」 ノーラッドがそばのベッドにドカッと腰を下ろす。 「………本当はデンドリスの国境まで行きたかったんだが。まぁ、今日はソイツが新しく仲間になったしな。……明日、覚悟しとけよ。歩くぞ」 ソイツ、とノーラッドの目線の先にはダグラナの腕の中の黒血歌竜(ブラッディ・アリア)。 なんだか、やっとこのドラゴンが仲間と認めてもらえたようで、自然とダグラナの顔には笑顔が浮かんだのだった。 2人と1匹、そして1体の長い長い旅は、まだまだ始まったばかりである。

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