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そんなある日 30
さくらside
「朔です。失礼します」
「お疲れ様。さくら」
「オーナー」
この人が一番俺を支えてくれた。
いきなりここで働きたいと言ったときも嫌な顔もせず理由も何も聞かないで雇ってくれた
壊れそうなときも彼が俺を抱き締めてくれた。
抱いてくれた。生きていて欲しいと言ってくれた。この人がいなきゃ俺はこうして生きていなかったのかもしれない
「オーナー長い間ありがとうございました」
「朔がいなくなるのはかなりの痛手だわ。でもよかった。表情が良くなった。朔、たくさん稼がせてくれてありがとな」
オーナーは悪戯に笑う
「オーナー…」
「最後くらい名前で呼んで?さくら」
「…心さん」
誰よりも強くて誰よりも暖かい人…俺にとってはヒーローだ。
大好きな人。ここを出たらもうこの人と連絡を取ることは出来ない。
店の決まり事だから。
「さくらっ…愛してるよ…」
「心さん…っ…あっ…」
気持ち良くて暖かくてこの腕の中は空っぽな俺の心のオアシスだった。
ずっとずっと側にいてくれて…ありがとう…
「もうすぐ二人が迎えに来る。荷物はどうする?」
「処分してもらっていいですか?」
「わかった。さくら…」
心さんに抱き寄せられる。そして柔らかなキスが降ってきた。額をコツンとつける。至近距離で見つめ合うお互いの目の中にはお互いしか写っていなくて…
その瞳の奥に心さんの迷いが見えた気がした…
「さくら…俺は…いや…何でもない。幸せになれよ。何かあればまた戻っておいで俺はずっとここにいるから。まぁそうなりゃただじゃおかないけどな」
「オーナー長い間ありがとうございました。サヨウナラ」
「…」
オーナーは何も言わず手を振っていた
ゆっくりと扉が閉まる…涙が零れた。
「俺…涙腺ぶっ壊れたかな…」
最近はすぐ涙が溢れてしまうから
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