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そんなある日 31

心side 「はぁ…さくら…好きだったよ…」 働きたいと言ってきたときのあの陰りのある表情に引かれた。 壊れそうに笑う姿をみて堪らなくて手を差し出した。 何度も体を重ねて行くうちにさくらの心の奥まで触れていた気がしていた…でもさくらの中身は空っぽのまま…空っぽの心に灯る小さな光は俺が灯したものじゃない… その相手が現れない限り…きっとさくらは綺麗な人形のまま生きて行くんだろう… それでもいい…俺の側にいてくれるなら… 店の商品に持ってはいけない想いを持ってしまったことを早いうちに認めていたけれどさくらに伝えることは出来なかった そんなとき昔の上客である相馬くんから連絡が入った。 さくらが思っているのは誰なのか…わかった。 多少のショックはあった…でも…さくらの心の火がまた燃えてくれるなら… その後朝陽くんが紹介状を持ってきて連れてこられたのは朝陽くんによく似た綺麗な顔立ちをした背の高い子とどことなくさくらに似ているこちらもまた綺麗な子だった。 名刺を貰うとまだ会社を設立して数年にも関わらず世界に名の知れた大企業の名前が入っていてさくらの身請け金もそう難しくなく用意できそうだった。 話してみるととても感じが良くまさに両親のいいところを受け継いだ天性の何かがあった 「VIPルームを使ってください。後は朔の気持ち次第。朔がここから出たいというのであれば身請けしてもらって構いません。しかし朔が拒めば引いてください。朔はうちの稼ぎ頭です。今朔の気持ちもなしに連れていかれるとこちらも困りますので」 「わかりました」 そうして送り出した日。二人が帰り俺の元へやって来たさくら。さくらの口から一年後にここを出ていく。そう伝えられた。 複雑で…でも好きだからさくらには幸せになって欲しかった…だから…俺は…お前を手放すよ… さくら…幸せになってくれ…そう願い自室に戻った。 あれから一年。これからあの部屋に二人が迎えに来る。 さくらとはこれで終わり… さくら…愛してた…

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