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そんなある日 32

「ただいま…」 さくらが緊張した面持ちで久しぶりに隅田家の玄関をくぐる 「お帰り。さくら…」 はるちゃんがそっとさくらの頭を撫でる 「今日は奏多がお前の好きな食事用意してるよ」 「…っ…今までごめっ…ありがと…」 「おかえり。さくら」 かなさんが涙を流すさくらをきゅっと抱き締めてくれた 「いつでもここに帰ってきてね。ここはみんなの家だから」 明日からは海外に旅立ち3人で同棲することになっていた。 だからここにはなかなか帰れない。 でも向こうへいけば俺たちのことを知るものは少ない。 3人で一緒にいるための決断だった。 遥さんも父さんも母さんも向こうでの仕事もかなり多いので全く会えない訳じゃないけれどやはり寂しい。 もうすぐ父さんも母さんもここへやってくる。 みんなで食事をすることになっているから 「いらっしゃい。星。朝陽さん」 「大したもの用意できなかったけどゆっくりして行ってね」 10年以上一緒にこうして食事を取ることなんて無くてさくらは涙が止まらないようだ。 「さーくーらー綺麗な顔が台無し。ほら笑って」 「ふふっ…星くんもひなも親子だね。同じこと言ってる」 「親子だからね」 みんなで泣き笑いながら夜は更けていった

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