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新たな旅路 45

「そんなもの持ち出して貴方は何がしたいのですか?」 「私はただ彼とお話しがしたいだけですよ」 「…僕の一存では決めることはできません。事務所に連絡しても?」 「えぇ。構いませんよ」 男の勝ち誇ったような笑顔…とても…胸くそ悪い… でも美陸のデータがそこにあるのは何とかしなければ。 「お受けすればすべてのデータをこちらにいただけますか?」 「えぇ。勿論です。うちのオフィスの私のデスク。鍵のかかる引き出しにいれているんです。だからインタビューが終わればそのままお返ししましょう」 「それに、偽りはありませんね?」 「えぇ。ありませんよ」 じっと瞳を見つめる。僕は心理学の勉強もしているのでだいたい瞳を見れば真実かどうかはわかる。男の目に嘘はないようだった 「…わかりました」 その場で凛さんに連絡をいれる。 『撫子くん。大丈夫なの?それを受ければ貴方はこれから先はおそらく多くのメディアに取り上げられることになる。穏やかな生活はおくれなくなるかもしれない』 『貴女がそれを言いますか?もう今更ですよね?大丈夫ですよ。僕にとっては願ったりかなったり…両親の名前を最大限利用し活躍して見せましょう…いいですか?』 『…わかったわ…でも、出来た原稿は刊行前にこちらにも渡していただきますから』 それを伝えると男は大きくうなずいた 『これから行ってきます。お騒がせするかと思いますが後のこと宜しくおねがいします』 「では行きましょうか。彼はもう帰しても?」 「いいえ。一緒で構いません。美陸さんも心配でしょ?」 「そうですね。ではご同行させていただきます。しかし少しお時間をいただきます。私の父と母にも話しておかなければならないはずなので。」 「そうですね。貴方のご両親も業界の人ですからね」 「僕も連絡します。少しだけお待ちいただいても?」 「えぇ。あちらの車でお待ちしていますね」 男が立ち去ったのを見送り再度凛さんと両親に連絡をいれる。おそらく美陸のことも書かれるはずだから… 「ごめんね…なーちゃん…ここであれが出るなんて…」 「こっちこそごめん。せっかくのデートだったのにね。ねぇ美陸。僕たちの関係…真実を話してもいい?」 「うん。いいよ。おそらく俺のこともあの人書くんでしょ?だったらその方がいいよね。世の中を牽制しておかなくちゃ…俺のなーちゃんだって」 「僕も同じ気持ちだよ」 そして連絡をして男の待つ車へ向かった 「お待たせいたしました」 「いいえ。では参りましょうか」

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