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台風
「十夜ぁ」
「おはようございます。夕燈さん」
「台風…来るかなぁ」
「この感じじゃ来るでしょうね」
「…お仕事かぁ」
「怖い?」
「…ううん。心細い…ぎゅってして」
「…」
十夜がゆっくり歩み寄り抱き締めてくれる…やっと…手に入れた俺だけの温もり…これももうすぐ俺だけのじゃ無くなるけれど…そっと大きくなったお腹に手を当てて撫でた
「何かあったらすぐ連絡して…戻ってくるから」
「ううん…十夜は沢山の人が待ってるから…だから」
「くすっ…またそうやって我慢するんだから…もっとわがまま言っていいんだよ」
「ん…でももう俺もお母さんになるから…」
「お母さんになっても夕燈さんは夕燈さんなんだから俺は変わらず貴方を愛するよ」
「うん。俺も」
「…じゃあ…そろそろ行くね」
「うん。いってらっしゃい」
重たいお腹を抱えて十夜の大きな背中を見送った
それから家のことをしたりでバタバタしてたらもう気付けば夕方だった。
「うそでしょ…ちょっと…待って…待ってよ…」
お腹に違和感を感じた…どうしよう…色々準備はしてたけど…なんか…どうしよう…
パニックになって電話を掴むと一番上にある履歴に電話をかけた。相手はすぐに出てくれて急いで向かってくれることになったんだけど…外は雨風共に酷くなっていて雨戸を大きく揺らしその音が恐怖心を煽っていた
「夕兄さん!!」
玄関に座り込んでいたら声がして鍵を開けると焦った顔の朝陽がいた
「あーちゃん…ごめんね」
「いいよ。立てそう?」
「う…えっ!」
ぱちんと、何かが弾けて下肢を濡らす…
「夕兄さん?」
「あ…あぁ…あーちゃんっ…あ…」
「夕兄さん?っ!!」
その時
「夕燈さん!!」
朝陽のパートナーである星夜もやってきて俺を大きなバスタオルで包んでくれてそっと抱き上げてくれた。十夜より大きな体。十夜以外に初めてこんな風にされてびっくりして思わず首に捕まった、
「行きますよ。もう少し我慢して」
そうやって俺を連れ出してくれて車の後ろに横にしてくれた。朝陽が俺の隣に座り髪をなでてくれた。きっとすごく急いできてくれたんだろう
俺に良く似た朝陽はいつもの完璧な姿とは違ってラフな格好でなんだか幼かった
「夕兄さん。大丈夫だからね」
病院への連絡などはすぐに朝陽がしてくれてた。
「風強いから揺れるかもしれないです。すいません。できるだけ急ぐので」
十夜以外の運転で車に乗るのも久しぶりだ。昔からなんでも出来た星夜はどんなときも冷静だ
本当にこの男が戻ってきてくれてよかった…朝陽を大切にしてくれる…色々あった二人のお陰で俺も今大切な人と一緒にいられる
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