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台風

運ばれてきた俺に十夜は驚いていた 「夕燈さん!!」 「十夜」 「破水しちゃった」  「はぁ!?えっ!!」 焦った十夜も初めてみた。なんだか可愛かった。不安も少し和らいだ気がした。外はさっきよりずっとずっと風も強くて雨も大きな音を立てて窓にぶつかってた 破水したら直ぐに産まれるって思い込んでたけどなかなかその時はやってこなかった。もう辺りはすっかり闇に包まれてた。そしたらまた不安になってぎゅーって自分を抱きしめていた。朝陽はそんな俺の側にずっといてくれた。星夜は子どももいるから一旦帰ったようだった 「あかちゃん…大丈夫?ねぇ…苦しくない?うーっ…赤ちゃん…」 心配そうに見守る朝陽の隣でカタカタ震えてると病室のドアが空いた 「夕燈さん!」 「とぉや…お仕事は?」 「父に許可をもらいました。これから側に要られます。なんで直ぐに連絡しないの?そんなに震えて」 そう言って優しく微笑んでくれた 「いたっ!!」 「「兄さん!!」夕燈さんっ!?」 「いたいぃ…」 「陣痛始まった?」 「んーっ…んーっ…」 十夜はそれから背中をなでてくれた そこからもすっごく長くて…数時間後分娩室に運ばれてその時がやってきた 「とぉやっ…いたいっ!!いたいよぉ」 「うん…大丈夫…大丈夫だよ。ちゃんと上手に出来てるよ」 「いやぁだぁ!!変わってよぉ!!痛いのっ!!痛いのいやっ!!」 子供みたいに泣きじゃくる俺を宥めながら十夜はずっと声をかけてくれた 「おぎゃー!!」 「はぁっ…はあっ…うま…れたっ…」 「うん。よく頑張ったね」 そういうとそっと口づけてくれた 「元気な男の子ですよ」 そう言って俺の胸に抱かせてくれた小さな小さな命はここにいるよっ!って主張するみたいに声をあげてくれた。十夜とおんなじ真っ黒な髪の子。 「天青」 名前は前から決まってた。天使の石って呼ばれる空みたいな綺麗な透き通ったブルーの鉱石からとったんだ。石言葉も素敵で… 「天青…生まれてきてくれてありがとう」 さっきまで痛くて痛くてあれてた心もふっと浄化されたみたいに軽くなった。そしたら天青も落ち着いてきた。 「十夜も抱っこして?」 「あ…おぅ…」 「ふふっ…」 十夜は恐る恐る抱っこしてくれた。お医者さんなのにそんなおっかなびっくりになっちゃうなんて…その姿にまた愛おしさが溢れた 抱っこしながらふにゃりと顔がほころんでいくいつもぴしっとかっこいい十夜先生にそこにいた女性は釘付けになってた。あんまり見ないでほしいなぁ…俺の…俺たちの十夜だよ! それからいろんな処置をして病室に戻ってみるとそこには朝陽たちが待ってた 「おかえり!夕兄さん!お疲れ様」 「あーちゃん!ありがとうね!星夜もありがと」 「いいえ。無事生まれてよかった。お疲れさまでした」 「夕兄さん!見てみて」 そう言って朝陽が大きな窓を開けると外は明るくなってて台風は過ぎ去って空はキラキラ光って虹が出てた 「夕兄さんたちを祝福してるみたいだね!あの橋を渡って天青くんがやってきたんだね!」 「あははっ!そうだねっ!あーちゃん」 「疲れたでしょ?もう休んでね。僕は一旦出直してまた会いに来るね!」 疲れているだろうに一晩ここにいてくれたんだよなぁ。そう思うとありがとうでいっぱいになった 「うん!ありがと」 朝陽はキラッキラな笑顔で立ち去っていった うちの弟かっこいい…

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