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台風
コンコン
「はい」
「どうしたの?夕くん。大きな声が聞こえてたけど」
十夜のパパの悠紀さんだった
「悠紀さん」
「おやおやおやぁ…くすっ…」
十夜に似たカッコいい悠紀さんの笑顔にどきっとして俯いた。なにこれ…かっこよすぎるんだけど…
「夕燈さん!親父に照れないでよ!」
「いやだって!カッコいい」
「俺を見てよ!」
「十夜。落ち着きなさい。らしくない。夕くん。どうしちゃった?苦しくなっちゃった?」
「俺…朝陽みたいになんでもできるわけじゃないから…だから」
「うん。そうだね。みんな違うよ。出来ることも出来ないこともね。…いやだぁ!ってなるときだって勿論あるよ。そしたら十夜は抱きしめてくれるよ。完璧な人間なんていないよ。それは俺や十夜。それに朝陽くんや星夜くんにだって言えることだ。親になると強くなれるって言う人沢山いるけどそれってさ一人で勝手になることではないと俺は思うよ。きっと一人でやらなくちゃ!とか朝陽みたいにならなきゃ!って自分を責めてしまってるんじゃない?君は真面目だもんね。けどそんなの無理だよ。一人でなんてできっこない。嫌だと思えば泣けばいいし叫べばいい。そしたら一緒に俺も背負うよ。だって夕くんも俺の大切な子供なんだからさ。夕くん。十夜のこと好き?」
「はい」
「天青のことは?」
「まだわからない」
「そうか。でもね、君はちゃんと愛しているよ。俺が保証する。大丈夫だよ。一人じゃない。ね?」
「ありがと…」
悠紀さんの優しい笑顔を見てるとなんだか気持ちが落ち着いてきた。
「十夜。ごめんね」
「…」
十夜は初めて見る表情でうつむいた
「…拗ねてる?」
「…言わないでよ…だって…親父の言うことは落ち着いて聞いてたし…なんかさ…まだまだだなぁって…夕燈さんができないなんて思ってないし朝陽みたいになってほしいなんてこれっぽっちも思ってないよ。だって朝陽は朝陽で夕燈さんは夕燈さんだから。でもさ知ってる?夕燈さん」
「ん?」
「朝陽も毎日泣いて泣いて大変だったんだよ」
「あーちゃんが?」
「うん。陽向はさ結構色々あってね。鳴き声が弱かったり呼吸が整わなかったりしてさ。でも星夜に支えられたり松さんやおばあさまにお世話になったりして少しずつ落ち着きを取り戻したんだ。あの頃夕燈さんは忙しくてこっちにいなかったから落ち着いてきてからの朝陽しか知らないでしょ?」
知らなかった。てっきりあーちゃんのことだから始めから完璧だと思ってた。
「子育ての先輩ではあるから色々話聞いてみるといいよ。昼過ぎには来るって言ってたし」
「うん。」
「今はゆっくりしてね」
「十夜…ありがと。悠紀さんも…ありがと」
「ふふっ。じゃあ私は戻るから何かあれば連絡を」
悠紀さんはお医者様モードで部屋を後にした
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