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第34話
夏休み目前のある日、心配は現実となり隅田は俺の目の前で倒れた。
そのまま担ぎ上げ保健室へ運ぶ。隅田は苦悶の表情を浮かべベッドに横たわっていた。
自分も仕事と朝陽さんで手一杯で日々やつれていく隅田に気付いていたのに、見ない振りをしていた。それが隅田の望みのように思えていたから。
隅田は7月に入り俺への楽曲提供はしておらずあるアイドル達を中心にプロデュースしていた。
デビューしたての彼らは実力はあり世間の評判も頗る良かった。
俺は彼らと一緒になったことないからわからないが事務所の企画で毎週新曲を出していた。その全てが遥の曲だった。
そのアイドル達ではなく他のアーティストも手掛ける隅田にとっては相当の労力を使っていただろう。
放課後になり保健室へ足を向ける。保健医が隅田の様子を見に来た奴らを全て追い払っていた。よっぽど悪いんだろう。この状態では入れてもらえないと思い踵を返す。足を踏み出そうとした俺に保健医の伊澄から声がかかった。
「片桐くん。待って。隅田くんに会いに来たんでしょ?」
伊澄はまだ若く温厚で中性的な顔をしている。教師達の中ではダントツの人気を誇る。
もちろん告白するものもいる。どれも上手くあしらっているようだが。
「片桐くんなら入れていいって隅田くんが言ってたから。入って」
「はい」
ベッドサイドに行くと弱々しく隅田がヘラりと笑った。
「私は職員室に行ってるからよろしくね」
会釈をすると、伊澄は綺麗に微笑み、駆けていった
「隅田。お前大丈夫か?仕事で寝てないんじゃないのか?」
「…うん…眠ろうとしても中々寝付けなくて」
「何かあったのか?お前の仕事量半端ないだろ?最近休まなすぎだろ」
「休めないんだよ」
辛そうに呟く隅田は今まで見たことない程覇気がなかった
「俺でよければ話聞くけど」
ポツリ、ポツリと話し始める
「片桐さ、Luna e sole、知ってるだろ?」
「あのアホみたいなスピードで新曲を出すアイドルだろ?」
「そうそう。あの子達かなり実力あってすごいんだけどさ」
「お前の曲があってこそだろ」
「あははっ…」
「でそのLuna e sole がどうした?」
「俺さ、前電話無くしたって伝えただろ?それが戻って来て。それを拾ってくれたのがそのメンバーの1人の稀城 鷹臣だったんだよね」
稀城といえば1番人気のセンターの名前だ。公式プロフィールを見る限りは俺とほぼ体型は同じ。顔の作りは全く違って最近のアイドルには珍しく短くカットされた漆黒の髪。切れ長で人を射るような視線に捕らえられると目を離すことが出来なくなると言われている。たまに見せる笑顔は悪魔の微笑と称され誰もが稀城から逃げられない。
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