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第35話

「無くしたやつが仕事用だったから帰って来てホッとしたんだけどさ。仕事用だったから面倒が起きて…俺が直接取りに行くと面倒が起こりそうだったから家のやつに取りに行かせたんだけどそのすぐ後にどうやって調べたのか何故か家に直接稀城がやって来たんだよね。たまたま出掛けるために外に出たらそこにいて…稀城は相馬さん宛に送ったメッセージの内容を見てその中にお前のこととか学校のことが書いてあるメッセージ見付けて俺自身が遥本人ということを知ったみたいだった。 稀城は曲を書いて欲しいと頭を下げて来た。Luna e soleがすごいグループだとは知っていたが、俺はこのグループに提供したいと思ったことはなかった。俺の好きな声じゃなかったから。初めは断ったんだけど稀城は中々引いてくれなかった。 押し問答を繰り返していたら稀城が突然正体をバラすと脅して来たんだ。 俺がバレる分には諦めもついた…でも…お前の事がバレるのが嫌だった」 何のことか解らずに黙っていた。俺はただの高校のクラスメイトでしかないはずなのに 「片桐の事あいつかなり詳しく調べてた」 「俺のことを?」 「あいつの目標は星夜さんでその人と双子であるお前に興味を持ったんだと思う。最初は興味本位だったものが調べて行くうちにあることに辿り着いた…片桐…お前双子なんかじゃないだろ?星夜本人だ…そして…生徒会長といい仲にある…」 「…」 「俺にも話さなかったのは俺を信用していなかったって訳じゃないのもわかるから攻める気はないがでもそうやってまで隠しているのに俺のちょっとした不注意で晒されるなんて耐えられないと思った。星夜が男の恋人がいると世間に知れたら致命的だ。俺の曲を歌ってもらえなくなる。これは俺のわがままでしかない…渋々書くことを了承したんだけど自分の納得いっていないものが世の中に毎週新しく出ていくそれが気持ち悪かった。気持ち悪くて飯も中々喉も通らないし眠ると悪夢にうなされた。稀城は本物の悪魔なんじゃないかと思った」 「ごめん…俺が本当のことを世間に伝えていなかったばかりにそんな思いさせて…ごめん…」 「お前が謝る必要はない…それだけじゃないし…俺もさ男の恋人がいるんだ…伊澄先生…。俺の場合、相手は教師だ。世間にバレたら先生がタダじゃ済まない…俺は書くしかないんだよ。どんなにきつくても…苦しくても…書かなきゃみんなに迷惑がかかってしまう。でも次の曲で終わりだから…約束は次までだったから…だから…」 いつもヘラヘラしている隅田が泣いていた。その涙には俺のことを思った涙もあるだろう。たまらなくて隅田の頭を抱いた。 隅田は肩を震わせ小さく謝っていた

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