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第37話
隅田side
この数ヶ月のハードな仕事で自分が思っていたより体は疲れていたのだろう…作りたくもない曲を歌って欲しくない奴らに歌われてあんなに好きだった曲作りが辛いものになっていた。休憩がてら相馬 星夜の曲を書いたりもしたがそれすらも見つかってしまい奴らに取り上げられた。
精神的にも追い詰められ倒れたらしい俺は今保健室で横になっている。片桐が運んでくれたらしい。
側では恋人の伊澄 奏多先生が心配そうに見守っていた。
放課後になりバタバタと沢山の足音がする。この足音はあいつとあいつだな…
「奏多。今俺誰とも話したくないからここに俺のことを心配して来てくれた奴らを悪いけど追い返してくれない?」
奏多は俺の希望を叶えてくれた。奏多は昔から面倒見が良く、良く気がきく優しい人だった。出会った頃から俺は奏多に恋をしていた。この恋が叶うなんて思っていなかったから高校に入り気持ちが通じたときはとても嬉しかった。
奏多は俺より大人だから俺もそれに合わせたくて無理して背伸びをした。そのことを知っている奏多は俺の気持ちを守るために敢えて知らないフリをしてくれていた。
そんなに優しい奏多を今苦しめているのは俺でそれがすごく辛いが俺が仕事を詰め込んでいる理由は伝えたくなかった。伝えてしまうと奏多はもっと傷付いてしまうと思ったから。
でも感が良い片桐はきっと俺から聞かなくても何か感じ取っているかも知れない。
話したことで片桐に負担を掛けてしまうとは思ったが少しでも楽になりたいという自分勝手な理由でこの状況のあらましを話すことにした。
「奏多。ありがとう。でも片桐だけは話したい事があるから入れて」
片桐のことだから様子を見にきてくれるだろうと思っていた。少しして片桐がやって来た。
すべて話し終えると本当に申し訳なさそうに謝って来た。別に片桐に謝って欲しかった訳じゃない。
稀城から話を聞きその写真を見せられた時血の気が引いた。色々なことが知らされ困惑した。でも黙っていられことに嫌悪感はなかった。
話し終えると堪えきれず泣く俺を片桐が抱きしめてくれた。気持ちが軽くなった俺は意識を手放した。
次に気付いた時は自宅の部屋だった。出来ていた曲を預けほっと息をついた。
これで約束は果たされた。もう作らなくていい…その時はそう信じていた
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