44 / 690

第44話

電話が切られた。隅田の様子がとてもおかしかった。急に行けば迷惑が掛かるかもしれない。でも…すぐに朝陽さんと共に隅田の家へ向かう。途中伊澄にも連絡を入れると近くにいたらしく車で迎えに来てくれた。 3人で隅田の家に行くといつもなら隅田の了承を得てからでないと玄関を開けてくれないのだが今日はすんなり開けてくれた。 「遥菜様の様子がおかしいんです。恐らく先ほどの報道を見られたからだと思うのですが…」 その使用人にさっきまでテレビで伝えられていた事を聞く。 「やっぱり…」 部屋に入るとそこに姿はなく部屋の奥のスタジオで鬼気迫る表情をしている隅田を見つける。鍵が掛かり防音の為こちらの声は聞こえない。家の人にスペアキーを貸してもらいスタジオへ雪崩れ込んだ。 「隅田!!」 振り返る隅田は瞳に光を宿していなかった。一瞬振り返るが直ぐに向き直ってしまい1人で何かぶつぶつ呟いていた。俺が踏み出そうとする前に伊澄が駆け寄る。無理矢理自分の方へ顔を向けさせ深く深く口付けた 「遥菜…ねぇこっち見て…遥菜!!俺を見ろって言ってるだろ!!!」 初めて聞く伊澄の怒鳴り声にやっと隅田が顔を向けた 「…奏…多…俺…俺っ…うわぁぁぁぁ…」 子供のように大声で泣く隅田を見ていられない…それを泣き止むまで何度も何度もキスをし抱き締める伊澄の辛そうな顔に胸が張り裂けそうだった。朝陽さんは俺の腕にしがみつき静かに涙を流していた。 一頻り泣いた隅田は俺たちに謝って来た。 「隅田。書かなくていい」 「でも書かないとみんなに…」 「大丈夫だよ…だから書くな。いいか?書くなよ」 戸惑いながらも頷く隅田はとても小さく見えた。 2日後期限までに上がってこないことに腹を立て隅田の自宅にLuna e soleの稀城とマネージャーがやって来た。 「期限までに上がらなかったので公表しますね」 隅田は何も言わず彼らに背を向けた その直後匿名で俺の事と遥のことが公にされる。 一時事務所への電話がひっきりなしに掛かり対応に右往左往していた。 しかしその慌ただしさも一時の事であっという間に終息した。 華陵院グループの圧が掛かったのだった。

ともだちにシェアしよう!