58 / 690
第58話
なずなと過ごしてもうどれくらい経っただろう?2日?3日?それとも1週間くらい?もう時間の感覚もなくただ与えられる刺激を全身で受け止めるしかなかった。
「星夜はやっぱりそう簡単に壊れないなぁ…早く壊れたら良いのに」
有り得ないほどの刺激で壊れてもおかしくない…自分もそう思う。全て身を委ね快楽に屈した方が楽に決まっている。でもまだ壊れないで居られるのは朝陽さんに会いたいという想いが快楽より先に立つからだ。
「なず。俺は壊されてやらない。俺は帰らなければならないところがある」
「煩いよ…星夜」
「なずが本当に欲しいものは何?」
「だから…星夜が壊れるところ…」
「違うだろ?本当はもう気付いているんだろう?」
「…うるさい…煩い煩い煩い煩い!」
「なず。俺にこんなことしても虚しいだけだよ」
「煩い!!!」
初めてなずなが俺の頰を叩いた
「星夜…僕にはもう何もないんだよ…」
「…」
「知ったような口叩かないで!!星夜なんかに判る訳ない」
ガチャ
聞こえるはずのない音が聞こえる
「なずな…これは…?」
「何で…?何でここにいるの…?」
部屋にやってきた人は黒髪のよく似合う優しそうな人だった
「何で…」
なずなに動揺の色が浮かぶ
「何で…?保科さん」
ともだちにシェアしよう!