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第59話
この人がなずなのご主人様だ。
ベッドに繋がれている俺を凝視したその人は戸惑いの色を浮かべる
「なずな…何で?何でこの人がここにいるの?相馬星夜くんでしょ?」
床に落ちた毛布を全裸の俺に掛けた
「そんなの…そんなの僕の勝手でしょ?あなたにはもう関係のないことだから」
「…」
「なずな。鍵は?」
「…」
「彼を解放しなさい。彼を待っている人が居るのだから。ほら。鍵を出して」
「イヤだよ…星夜を…星夜をこの手で壊したいんだから…イヤだ」
「なずな…」
そう言うと保科さんはなずなを抱き締めた。
「私が悪かった。もう一度ちゃんと話がしたい。だからチャンスをくれないか?」
なずなを離すと深々と頭を下げた。
なずなは戸惑いながらも鍵を保科さんに渡し俺を解放してくれた。
「動けるかい?今朝陽くん呼ぶから」
「朝陽さんをご存知なんですか?」
「彼の幼少期から知っている。華陵院とは一緒に仕事をさせてもらっているから。本当に申し訳ないことをした。なずなに変わって謝らせて下さい…話したら直ぐに警察へ行かせるから少しだけ時間を下さい」
「警察なんていいです。俺は大丈夫ですからそれよりもなずなの側にいて欲しいです。なずなの話を聞いてあげて下さい」
部屋の片隅に置いてあった自分の服を着ながら伝える。
「…ありがとう…」
「イヤだ…イヤだ…イヤだ…」
なずなが壊れたように大声で泣き出す。
「イヤだ…」
「なずな…なずな…大丈夫だから…俺が側にいるから…あんなに酷い事をして言うべきではないのだけれど…でも…俺は君を離したくないんだ…なずな…ごめん…ごめんな…」
「うわーーーーっ…保科さん…保科さん…うぇ…エッ…ぐっ…保科さぁん…」
「大丈夫だよ」
なずなの背中をポンポン優しく叩きながら保科さんが囁き続ける。
そうしているうちに部屋のインターホンが押される。
「朝陽くんだと思う…出てくれるかい?」
無言で頷き扉を開ける。目の前には会いたくて会いたくてたまらなかったその人がいた
「朝陽さん…心配かけてごめんなさい…」
「せいくん…大丈夫なの?」
泣きながら俺に語りかける朝陽さんはやっぱり可愛くて…
奥から保科さんがなずなの手を引きやってきた。
「今度ゆっくり話をさせてくれないか?本当は今すべきなんだけど…ごめん…朝陽くん」
「わかりました」
そのまま荷物を持ち部屋を後にした
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