60 / 690

第60話

朝陽side 保科さんが大切な人と会えますように…そう願いわかれた 保科さんとわかれてから直ぐにはそこから動けずにいた。どれくらいそうしていただろう? 長時間かもしれないしほんの少しだったかもしれない バッグに入れた携帯が震えだす。ディスプレイに映し出された名前にどうしたのかと首を傾げながら通話ボタンを押す。 「もしもし」 「朝陽くん。…相馬くん見つけたよ」 「えっ!?」 「これから言うところに来て。迎えがいるかもしれない。誰か車出せる人って捕まる?」 「はい」 「じゃあ待ってるね」 何で保科さんが見つけられたんだろう?こんなに近くにいたのに何で見つけられなかったんだろう?でも…見つかってよかった。言われた場所に向かいながらくるみさんへ連絡をする。幸いすぐ近くにいたらしくすぐ来れると言う事だった 保科さんに指定されたところは最近できたタワーマンションの最上階だった。 インターホンを押し開かれた扉の奥へ進む。直通のエレベーターに乗り込み部屋の前に立つ。静かに開かれた扉の先に会いたくて会いたくて焦がれた人がいた 「朝陽さん…心配掛けてごめんなさい…」 「せいくん…大丈夫なの?」 気付いたらまた涙が溢れていて。こんなにやつれているせいくんは初めて見た。手首には何かの跡がくっきり付き少しはだけたシャツの隙間から覗く首筋や鎖骨のあたりに紅い花がいくつも咲いていた。 しばらく黙ってせいくんに見入っていると奥から保科さんがやってきた。その腕に綺麗な人が抱かれていた。彼は俯き今にも壊れて崩れ落ちてしまいそうな程儚く顔にはまだ涙の跡があった この人が保科さんの大切な人…でも何でここにせいくんがこんなに苦しそうにしているのだろう? この人とせいくんはどんな関係なのだろう?考えてもわからないけれど。そんな僕の表情を察してか保科さんが語りかける 「今度ゆっくり話をさせてくれないか?本当は今すべきなんだけど…ごめん……朝陽くん」 その顔が今にも泣き出しそうなくらい苦しそうな表情に頷く 「わかりました」 そのまませいくんは自分の荷物を持ち一緒に部屋を後にした
ロード中
ロード中

ともだちにシェアしよう!