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第62話
下に着くと母の車が停まっていた。母が今まで見たこと無いような心配した表情をしていた。
申し訳無くて顔があげられなかった。
母にこんなに心配させるなんて…自分が情け無い…自分がもっとちゃんとなずなと話をし、離れていたら違ったかもしれない。なずなも傷を負わなくて良かったのかもしれない…俺が普通に生活していた時なずなはどんな仕打ちを受けていたのだろう…何も知らず平凡に生きていた自分を今更振り返っても遅い…
こんな俺を見て朝陽さんはどう思っただろう?こうなった経緯を話したらどう感じるのだろう…
どんなに考えても名案は浮かぶはずもなく…誰も何も発しないまま自宅に着く。
「朝陽くん。星をお願いしてもいい?」
「はい」
「よろしくね」
朝陽さんの方が俺が楽になるだろうそう思い朝陽さんにお願いしたのだろう。母に気を遣わせてしまった…
部屋の前に行き鍵を回す。そういえばこの家に誰かを入れるのは初めてだったな…
「せいくん。大丈夫?」
まだフラつく俺を心配そうに支えながら見上げる朝陽さんはやっぱり可愛くて…思わず抱き締めてしまう
「朝陽さん…会いたかった…」
朝陽さんを抱き締めた途端さっきまでなずなに抱かれ啼いていた自分が綺麗な朝陽さんを汚してしまう気がして直ぐに離れる。
「すいません。朝陽さん…シャワー浴びてきます」
「うん」
頷く朝陽さんに背を向けフラつく自分に鞭を打ち浴室に向かって廊下を歩く。朝陽さんがどんな顔をしているのか見るのが怖くて振り返れなかった。
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