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第64話
朝陽side
今どんな気持ちでいるんだろう…あの赤い痕はそう言う行為があったという事だよね…?
でも迎えに行ったところの家主は泣き腫らしていた…せいくんが無理矢理にということはあの姿を見ると考えられない。
そういう行為をしたとして僕はせいくんのこと嫌いになる?…いや…それはあり得ない。現に今だってせいくんが好きで好きで堪らないのだから…
せいくんの気持ちがあの人に向いてしまっていたら?…それでも僕はせいくんのことを好きでいるのだろう。
何度考えてもやっぱりせいくんが好きだという現実は変わらない。
考えているうちにもう随分と時間が経っていた。せいくんが戻ってくる気配はない。
お風呂で倒れていないだろうか?心配になり浴室に向かう。ドアの前から何度もせいくんを呼ぶが返事はない。思わずドアを開けた。
そこには肩を震わせ蹲るせいくんの姿があった。
その姿があまりにも辛そうで思わず服が濡れるのも構わず中に入りせいくんを抱き締める。せいくんは何も言わない
「せいくん!?」
呼ぶと今度はもっとキツく膝を抱えた。その姿を見ると胸がキュッと痛くなった。
「せいくん。僕は何があったのかわからないけれどせいくんへの気持ちは何も変わらない…せいくんがここに存在している限り変わらない…」
まだ膝を抱え震えるせいくんに僕を見て欲しくて更に続ける。
「せいくん…僕を見て?」
せいくんがゆっくり顔を上げた。その表情はとても苦しそうで僕は思わずそっと頰に触れ、口付けた。
「せいくん。せいくんが好きだよ。せいくん以外は何もいらない」
本音だった。
せいくんを感じたくてもう一度口付けをする。少しじゃ足りなくて舌を押し込みせいくんのを探し出し絡めた。一度では足りない。もっともっとたくさん感じたくて何度も顔の角度を変える。せいくんはそれをただただ受け止めていた。
2人で涙を流しながらするキスはとても苦いものだった。
「せいくん。辛かったね…。苦しかったね…」
一緒にボロボロと泣き、落ち着きを取り戻してからゆっくりと立ち上がる。
明日からまた一緒に進めますように。
びしょ濡れになった僕はせいくんの服に着替えた。
その日は同じベッドで抱き合ったまま眠った。明日からまた一緒に笑えますように…そう願い瞼を閉じた
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