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第71話
「星夜。本当にごめんなさい…どうかしてた…星夜には酷い事をした…ごめんなさい…朝陽さんもごめんなさい…僕…あなたが羨ましかった…大好きな人に大事にされていることが…あなたにまで酷いことをしようとした…ごめんなさい」
あの10日何が切っ掛けでどんな事をしたのかなずなは話した。俺は耳を塞ぎたくて堪らなかった。胸から込み上げてくる何かわからない感情が気持ち悪かった。
朝陽さんを盗み見ると自分のことのように顔を歪めていた。その表情は俺を思っての物なのかなずなを思っての物なのか保科さんを思ってのものなのか…恐らく全てなのだろう
「なずなさん。あなたは今幸せですか?」
「…え?」
突拍子も無い質問を投げかける朝陽さんにその場にいる全員が目を見開いていた
「保科さんは幸せですか?」
「私はなずなにとても酷い事をした。なずなが苦しみ傷付いていたのに話を聞こうとしなかった。私はなずなに償わなければいけない。もちろん君達にも…
でも償いのために一緒にいたいと思うのは違う。私はなずなを愛してしまった。
離れて初めて気が付いてとても後悔した。
あの部屋を渡したのも自分では気付かないままなずなを縛りたかった故のことなのだろう。
私はもうなずな無しで生きて行くことは出来ない。今は幸せかって聞かれると幸せだとは言いきれない。これから2人で幸せになりたい」
保科さんの声を聞きなずなに視線を移す
「なずなさん。保科さんと一緒に歩いたらどうですか?あなたはとても傷付いた。肉体的にも精神的にも。せいくんにしたことだってとても後悔していますよね?している間苦しかったですよね?でもせいくんはあなたにはもうあげられませんし、あなたが今そばにいて欲しい人はせいくんじゃない。保科さんでしょ?だったら保科さんに全部を開いて見せてください。保科さんは全て受け入れてくれるから。
貴方がしたことは絶対に許せません。許す気もありません。せいくんが貴方のこと傷付けた日だってもう戻りません。それはせいくんがずっと背負って行くものです。何もなかったことには出来ない。でもこれからは、今からは、作って行くことは出来るんです。まだ始まっていないのだから。せいくんのことは僕に任せて下さい。これだけ喋りましたが、結局僕はせいくん以外どうでもいいんです。今後貴方がどうして行くかなんて興味はないです。でもせいくんはあげません。何度も言います。せいくんはあげません」
そう言いニヤリと笑う。その顔は初めて見た。こんなに強く言葉を紡げるなんて正直驚いた。保科さんもなずなも口をあんぐりと開け聞き入っていた。
「せいくんはきっちり反省してなずなさんに謝って下さい」
言われるままに謝る。あの日がなければこうはならなかったから
「申し訳ありませんでした」
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