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第79話
稀城は隅田の一件以来心を入れ替えたのか今は以前のように魅力的な歌を歌い仕事に対する姿勢も前向きで真面目にやっている。
そして何故かやたら俺に懐いている。年上のくせに俺にも敬語だしいつも気遣ってくれる
稀城は関山に聞こえないよう俺に耳打ちした
「相馬さん。大丈夫ですか?」
意図的に間に入ってくれたとわかり好感度が上がる。
稀城が今回の仕事で関山を取り合う相手役だ。
物語は幼馴染みの三人の心の変化が綴られる王道のラブストーリーだ。
俺の演じる煌太は何でも出来る王子様的存在。稀城の演じる耀慈は熱血で明るくスポーツが得意なマスコット的存在。その二人の間で揺れ動くヒロインが関山だ。
元のラストは耀慈を選ぶ設定だったが関山の我が儘で煌太に変更になり、更に関山の注文で元はなかったキスシーンなんて付け足されたのだ。
そうこうしているうちに撮影が始まる。始めから中盤まではスムーズに行ったのだがキスシーンの部分が何度も取り直しになる。元々振りだけなのでその通りやっても関山が不自然に近寄ってくる為中々終わらない。
こいつは立ち位置も覚えられないのか…
しかし何故か俺がNGを出したことになる…
それの繰り返しで今日で録り終わることが出来ず俺と関山だけが明日もう一度録ることになった。
朝陽さんと久し振りにゆっくり過ごすからと楽しみにしていたのが一気にどん底まで落とされる。
帰りの車の中でも不機嫌オーラ前回の俺に母も何も言えずにいた。
自宅に戻り朝陽さんに伝えると仕事だからしょうがないと笑顔で答えてくれた
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