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第92話
宮部side
今日は入学式。兄貴達が話していた人が壇上で挨拶をしている
聞いていた通り見た目が個性的な人だったがすごく心地の良い声が脳を揺さぶるようだった。
低く甘い声。この声だけで俺の体は熱を持った。
俺は声フェチなのだ。聞いていた風貌からして好きになることなんて無いと思っていたが完全に声に惚れてしまった。
入学式が終わってボーッとしている俺に幼馴染の望月 嶺が話しかけて来た
「おーい。愛斗ー聞こえてる?」
嶺は男前だ。俺と違って背が高く健康的に焼けた素肌によく似合う笑顔。昔からモテていたが当の本人は全く興味がない様子で今までお付き合いした人はいない。
俺が嶺だったら取り敢えず誰彼問わずお付き合いなどしていたかもしれない。
幼い頃からのコンプレックスであるこの女顔と声変わりしたにも関わらずあまり低くならなかったこの声が心底嫌いであるため低い声に憧れを抱いていて今まさに俺のタイプど真ん中の先輩を見つけてしまった。思い出し頰が熱くなった。
「おーい。愛斗。顔赤いよぉーどうした?」
「嶺…俺片桐先輩に一目惚れ…ん?声にだから一声惚れ?しちゃった」
「は?」
「これから告ってくる!」
「ちょい待て…今HR中。終わるまでまず待ちなさい」
「…」
逸る気持ちを抑えて渋々席に着いた。長く感じる担任の話が終わると急いで教室を出た。
昇降口へ行くともう靴を履き歩き出そうとしている片桐先輩を見つけた
「片桐先輩!」
呼んでみるが振り返ってくれない。何度も呼ぶがやはりダメ
「片桐先輩!片桐 星先輩!!」
やっと振り返ってくれた先輩の表情は髪の毛で見えない
「…」
走って来たから少し息が上がってしまい肩で息をする。意気込んで名前を呼んだが緊張して顔が熱い。言葉も中々出て来なくて一瞬考えて出た言葉が
「片桐先輩。僕に勉強を教えてください」
だった。
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