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第93話
宮部side
「…」
やはり何も返ってこない…あ…そういえば名前も名乗ってなかった…
「1年C組 宮部 愛斗です」
「…」
「え…っと…俺…あっ…僕には兄が二人いてこの学校の卒業生で。その兄達からあなたのことを聞いていて一度会いたいと思ってここに入学したんです」
「…」
嘘ではなかった。何度も聞くこの人がどんな人なのか見てみたくてここに決めたのだから
「教わることなど無いだろう。断る。じゃ」
あの声にまたも体が熱くなる。
このまま帰したくなくて言葉を紡ぐ
「お願いします」
それでも立ち去ろうとする先輩に思わず
「片桐先輩。好きです。付き合ってください」
あ…しまった…勢いで本音言っちゃった…
「は?無理。俺付き合っている人いるから」
即答され相当ショックを受けた。
かなり失礼だがこんな個性的な人に相手がいるなんて思っていなかったからショックは大きい
でもこのまま直ぐに引き下がりたくなくて何度も想いを告げる。相手がいる時点で自分にチャンスなんてないのに…
「じゃあ…じゃあせめてお友達になって下さい」
しつこい俺に諦めたのか
「わかった。友達ならいいけどそれ以上にはならないからな」
念を押されるが友達としてでも一緒に過ごせれば嬉しいと思って頷いた
次の日から毎日昼休みには先輩に会いに行った。先輩は休みがちなので体が弱いのかもしれない…
先輩がいない時は決まってとっても軽そうな美人な先輩がいない事を教えてくれた。
先輩に会いに行く度視線を感じるがどうでもよかった。先輩の声さえ聞ければ。
そして少しでも恋人気分を味わいたくて帰りは一緒に帰る…というか勝手に後ろについて行った。
俺と家の方向は同じのようで俺が家に辿り着くまでは一緒だ。それがとても嬉しかった
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