95 / 690

第95話

望月side 入学式が終わってから愛斗が変だ。 遠くを見つめながら今日何度目かの深いため息を吐く。 憂いを帯びたその表情は何とも言えず胸が締め付けられる。 思わず声をかけた 「おーい。愛斗ー聞こえてる?」 遠くを見つめたままの愛斗に俺の声は届いていない様だ。愛斗の顔がふと顔が赤らむ。 昔から愛斗の事が好きな俺はその顔に胸が軋んだ。 …誰かに恋したんだ… いつか来るとは思っていたけどまさか高校でこんな顔を見ることになるなんて。 ここは男子校で教師達も皆男性だ。入学式が終わってからあの様子という事はこの多くの男の中の誰かが愛斗に好意を向けられたという事。 性別を言い訳にして気持ちを伝えなかった俺にとってこんなに苦しいものはない。 素直に応援してあげる勇気もなくとにかく今愛斗にこっちを見て欲しくてもう一度呼ぶ 「おーい。愛斗。顔赤いよぉーどうした?」 やっとこっちを見てくれた愛斗の大きな目は潤んでいて色っぽかった。 「嶺…俺片桐先輩に一目惚れ…ん?声にだから一声惚れ?しちゃった」 聞き慣れない言葉に一瞬戸惑い 「は?」 そう発していた。するといきなり立ち上がり 「これから告ってくる!」 今にも走り出しそうな愛斗に焦り声をかける 「ちょい待て…今HR中。終わるまでまず待ちなさい」 「…」 大人しく座り直す姿に安堵する。愛斗は昔から突拍子も無い行動をよく取る。思い立ったらすぐに走り出してしまう事は日常茶飯事でそれを宥め、止めるのは昔から俺の役目だった。 こんなだからほっとけないんだ。 愛斗は見た目が可愛らしく頭も良く誰にでも分け隔てなく優しいのでモテるのだがこの行動をして居るのを目にすると熱も冷めるのかそれからは子犬でも愛でる様な目に皆変わる。 ただやはりこの見た目のため変な男にイタズラされそうになることも多く1人で行動されるのは心配でならない。まぁ…本人は自分が危ない目にあって居るのにも気付いていないが…だから余計に俺の心配は尽きない。愛斗が恋した相手は確か挨拶していた人。見た目はまぁ…変わってるが声は確かに心地良かった。変な奴じゃなければ良いけど…小さく息を吐いた

ともだちにシェアしよう!