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第108話
隅田side
3コール目に電話に出た先輩は声が震えているように聞こえた
「もしもし…ねぇ…せいくん知らない?」
「片桐は今日はうちにいますよ。先輩、他に好きな人できたんですか?」
単刀直入に聞く。
「…そんなことあるわけない。それはせいくんの方じゃないかな…急に別れましょうってメール入ってて…それから何度も連絡してるんだけど電源切られてて…僕仕事用の連絡先聞いてなかったし…くるみさんにもかけてみたりするけど忙しそうで何も聞けなくて…学校に行けば休学中ってことで会えないしマンションに居ても来ることもないし…せいくんの自宅には全然帰ってこないし…完全に避けられてるから…他に好きな人いるんだと…誰か出来たんだと…思って…」
「…貴方達バカですね…」
直接話せば簡単に解決できそうな話で…恐らく片桐が見た先輩には何か他の理由があることは明らかなのに片桐のヘタれ具合に呆れる。
でも壊れそうな片桐にそんなこと言えなくて。
「会いたいならうちにきますか?引き留めますけど」
「会いたい…会いたいよ…」
「じゃあ待ってますね」
部屋に戻る前に梅さんに片桐の分の食事の用意をお願いする。
「今日の仕事これだけでしょ?」
前もってくるみさんにスケジュールを聞いていた。くるみさんが敢えて仕事をこのあとに入れなかったのだとすぐにわかる。
こんなに愛されてるのに何で頼らないのかな…まぁ片桐の生い立ちからするとそうなるのも仕方ないのかもしれないけれど…
「飯食べてけ」
迷う片桐に重ねて言う
「今梅さんにお前の分まで用意しておくように伝えたからこれでお前帰ると梅さんの労力無駄にすんぞ」
梅さんとは面識があるので人のいい片桐は断らないと践んでいた
おそらく食欲はあまり無いのだろう。
しばらくして梅さんが食事を運んでくる。
流石は梅さん。胃に優しそうな物を用意していた。
片桐は無理にかもしれないが完食してくれた。
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