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第120話
カメラを通し朝陽さんを舐めるように見ている土門さんの視線が俺にも伝わってくる。この人をこんなに本気にさせる朝陽さんはプロだ。
何と無く嫌な気分もあるがそれがまた俺を駆り立てる。
これも仕事。精一杯演じきる。
朝陽さんは俺に全てを預けていて周りの視線には気付かない。
目の前の愛しい人は艶やかな表情で俺にすり寄る
朝陽さんだけど朝陽さんじゃないような表情が堪らない。
土門さんの気持ちがわかる気もする。
この人はやはりすごい人だ。誰もが引き付けられる魅力のある人だ。
「お疲れ様。2人とも良かったよ」
「ありがとうございます」
「ところで朝陽くん。君本当にモデル経験ないの?」
「ないです」
「今回ので本気でデビューしてみない?また君を撮りたい。相馬くんと一緒に」
「僕はそもそもモデルには興味がないので出来れば出して欲しくないです」
朝陽さんのあの表情は表に出さないと勿体無い気もする。見せたくない気持ちも大きいが…
「せいくん。どうしたらいいかな?」
「朝陽さんが自分で決めた方がいいと思います。俺はあの朝陽さんは出さないと勿体無いとは思いますが」
「…土門さん。僕は1人ではやりません。必ずせいくんと一緒で撮るのは土門さんだけというのであれば…」
「本当かい?俺も君は他には撮らせたくないと思っている。今日の表情も相馬くんがいたからのものだと思う。だからその条件は飲める」
「でも学業を優先したいのでそこは理解していただけるとありがたいです」
「わかった」
その後発売されたこの雑誌は通常の数倍売れ、増刷も決まったそうだ。
表紙には俺の恋人という文言も入っていた。随分と伏せられていたことが世間的にも明るみになった。
前回の隅田の一件から元々世間へ公表しても構わないということだったので特に問題はなかった。
仕事は減るかと思いきや増えていく。朝陽さんへ対する俺の一途さが逆に評価される結果となったのだ。
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