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第169話
少し席を外すと部屋をはなれた土門さんを見送った
蘇芳さんはそのまま話を続けていた
「でも脱がなければ仕事はできる。今度新しく刊行される雑誌があるんだ。ファッション誌になるんだが君たちに専属モデルを引き受けて欲しいんだ。
土門が最近お前たちを撮れてないからか調子が出ていなくてね。
写真がただの写真になっている。呼吸が聞こえてこない。熱が伝わってこないんだ」
「そうですか?」
「あぁ…最近の見ていないのか?」
「いえ拝見していますが…」
「これが朝陽くんに出会う前の作品。真ん中が朝陽くんに出会った後の写真。1番こっちが最近の。
見比べるとよくわかる。元々被写体で変わるようなやつではなかったんだけどな。朝陽くんの影響が出ているんだろう」
「僕は何も」
「自分で気づいてない才能って怖いもんだな」
それは俺自身も朝陽さんと仕事をして来てわかっていたことだった。朝陽さんが持っているものが周りにどれだけ影響を与えているのか本人は全く気付かないのだ。
「天音は基本的には人に影響をされないほど芯が強い。そんなあいつをこんなにしてしまったのは君以外考えられない。土門のプロとしての命を永らえるために力を貸してくれ。頼む…」
「僕が本当にできるのかはわかりませんがやってみます」
「朝陽さんが決めたのなら俺も異論はないですけど。朝陽さん。前とは違って表立って仕事する事になりますから今よりさらに注目されます。周りを囲む環境変わって来ますが大丈夫ですか?」
「せいくんと一緒なら大丈夫だよ」
「わかりました」
見計らったように土門さんが戻ってきた。
「天音。了承してもらったからしっかり頼んだ」
「わかりました。またよろしくお願いします。俺はこっちは自分が撮る事は初めてだから至らないことがあれば教えてほしい」
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