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第171話

北元は周りの目も気にせず涙を流した 「自分でいいんですか?」 「父が貴方は本当に育成することに命をかけてもいいと言いながら日々取り組んでいたと聞いている。どこで間違えたのか僕には到底わからないけれど父が知っているあなたを信じてみるならばそれもいいのかもしれない。でも次はないから。今度また何かあれば完全にあなたを抹消してあげる。覚悟しておいてね」 「はい。ありがとうございます」 その後色々な苦悩が北元を待っているがきっともう裏切る行為などしないだろうと思えた。 彼の仕事ぶりは本物だった。華陵院から認められ世間の評価も上がっていた。 彼の事務所は次第に大きくなり所属タレントたちは殆どが実力が確かなものばかりだった。 「やっぱり北元はいい腕してるんだね」 「元々私の大学の後輩なんだ。昔から彼は誰よりも真面目で誰よりも努力家だった。気遣いも良くできるそんな奴だったんだ。あの頃は何かを見失ってしまったんだろう。彼が初めて育てたタレントが病で逝ってしまったから。繊細なあいつには他に自分を保つ術を見つけられなかったのだろう」 朝陽さんの父である早希さんがそう話す。それを一緒に聞いていた。 「そういえば朝陽」 「はい」 「モデル活動は楽しいか?」 「はい。せいくんといつも一緒なのでとても楽しいです。土門さんもいい人ですし」 「そうか。お前が自ら何かをやりだすことなんて初めてだったから父さんも嬉しくて」 朝陽さんによく似た綺麗な笑顔で笑う。 「なぁ朝陽。華陵院の仕事をする気は無いか?」 「僕は大学を出たらモデル業でやっていけないだろうかと考えています」 「簡単な道ではない」 「分かっています」 「今の人気がいつまで続くかもわからない。それでも…」 「はい。やればやるだけやりがいのある仕事です。簡単なことではないことも理解しています。しかしできるところまでやってみたいのです」 「わかった。何かあればいつでも頼りなさい」 「ありがとうございます」 「相馬くん。朝陽をよろしく頼む。朝陽はこう見えて弱い部分が多くある。相馬くんもそうだと思う。しかし、2人なら互いに補えると思うから」 「はい」

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