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第196話

手紙のやり取りは長いこと続いた。 やり取りを始めて10通目。 朝陽さんが退院。そのふた月後の手紙には神楽坂先輩の退院が記されていた やっと先を歩く意思が芽生えたのだと嬉しそうな様子が手紙を通じて伝わってきた 良かった…本当に良かった… その数ヵ月後。 最後の手紙には二人が共に歩くと決意した事が書かれていた。 それは暑い夏の日だった …朝陽さんは俺を待つのではなく…先輩を選んだ… …とても苦しかったがこれからは後輩として二人を見守って行くことにした。 そうなるだろうと何となく予感していたがやはり胸は苦しく…でもどんな形であれ前に進めるのであれば…生きていてくれればそれで良いのだと自分に言い聞かせるしかなかった。 日本を離れて約3年。 今、俺は日本に帰国した。また新しい人生を歩くために… 空港の外に出ると肌を差すような暑さでセミがうるさく鳴いていた 耳を塞ぎたくなる程のあまり嬉しくない歓迎だった

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