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第211話
朝陽side
せいくんの言葉を静かに待つ。
一瞬息をのみ視線をさ迷わせたせいくん。
意を決したように言葉を紡ぐ
「宜しくお願いします…華稜院さん…」
目の前でよそよそしく僕を呼ぶ。
深く深く頭を垂れるせいくんに抱きつきたい衝動に駆られるが必死で堪えた。
まだこんなにも愛しい…今更気付いてもどうしようもないのに…
傷付けたのは僕なのに…
僕には十夜がいるのに…
こんなの…
「じゃ僕は稀城さんのところへ行ってきますね。相馬さんお願いします」
一度会釈し彼は走り去っていった
彼はまだ若い。僕とせいくんの関係を知らなくても仕方がない。
今日担当だったはずの桜庭くんはとても仕事ができる子だ。他に彼の代わりをできる人はそう見つからない…
何でも出来るせいくんだから選ばれたのだとわかっている。わかっているけどまだ混乱していた。
こんな気持ち…気のせいだと自分に何度も言い聞かせた
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