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第228話

十夜side 目を開けると隣に朝陽は居なかった。 その代わりに二人の欲望がシーツに溢れていた このベッドは星夜と共にしている場所… 起きてみて昨日の情事を後悔した 朝陽には星夜がいるのに… 寝室を出ると浴室から微かに水音が聞こえる 浴室のドアをそっと開ける 物憂げな朝陽がシャワーを浴びていた 「朝陽…」 その姿が消えてしまいそうで名前を呼んだ 吸い寄せられるように朝陽を抱きしめた 「朝陽…ごめんな…俺…星夜がいるのに…」 星夜が朝陽にとってどれだけ大切なのかはよくわかっていた 「僕が求めたんだから十夜は悪くない。十夜は平気?」 朝陽は俺を責めない…責めてくれた方がよかった… …本当はずっと前からわかってた …俺にとっての朝陽はただの幼馴染じゃないってことくらい… 美那のことは愛してた…でもこの感情は… …美那だって気付いていたんだ…それでも美那は俺を受け入れてくれていた… 結局美那には何も返すこともできないまま美那は逝ってしまった…そして…昨日… どうしても…朝陽を…長年の思いが堪えられなかったんだ… でも…俺たちの情事は美那も星夜も裏切ったことに他ならなくて…ただ天井を見上げていた… 朝陽を抱きしめキスをした…朝陽は綺麗な涙を流した… 「朝陽…一緒に落ちてしまおうか…」 拒否して欲しい…罵って欲しい…そうしたら諦められるから…なのに朝陽は無言で見つめ返した これ以上求めてはダメだ…でももう止まれなかった 「朝陽…側にいて…」 朝陽はそっと抱き締め返してくれた… そして… 「十夜…一緒に行こうか…」 朝陽は自分のものを全て捨てていった…そのどれもに星夜との思い出が詰まっている… 朝陽は最後に星夜がくれたと言っていた小さな石が埋め込まれたリングを外しテーブルの上に置いた ダイヤモンドの石言葉は永遠の絆…星夜の思いの詰まったもの… …清浄無垢…朝陽にぴったりの言葉… なのに俺が汚してしまった…誰よりも幸せであって欲しかったのに… 崩れていく… ごめん…朝陽…ごめん…星夜…ごめん…美那… そんな俺の手を涙を流しながらそっと包み込む…朝陽が歩みを進めた… テーブルで鈍く光るリングを朝陽に気付かれないよう持ち出した。 一緒に来てみたけどやっぱり星夜の元に帰りたいと言えば朝陽に返してやろうと…少しでも嬉しくなれば…と思ったから…

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