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第229話

十夜 side 近くに停めてあった俺の車に乗り込む… 朝陽は窓の外を見ていた。 何度かコンビニに立ち寄り朝陽が車を降りた時勝手に持ち出したあの指輪をコンソールボックスにしまった 飲み物を持ち戻ってきた朝陽から受け取り思い出の海へ向かう 最近はほとんど誰も行かないが俺たちにとっては思い出深いプライベートビーチだ 幼い頃はあっという間に感じていたあの場所がとても遠く感じた 到着したのはもう空が朱色に染まり始めていた ここから見る夕日が好きで空の色が徐々に変わる様を3人で興奮しながら語っていた 今ここには俺と朝陽の2人きり。繋がれた手を解くこともせず懐かしい景色を見ていた 一頻り会話をし見つめ合う 「こんなに幸せだったのに…何でかな…」 朝陽から何も返ってこない 「お前は本当にこれでいいの?」 最後の確認…これで手を離すのなら一緒には連れて行かない。星夜の元に帰すから…だから…どうか…手を離して…でも… 「うん。十夜と僕は幼馴染でしょ。一緒にいることって当たり前のことじゃない」 もう離せない…どちらとも無く唇を重ねる。深い深い暗闇に堕ちてゆく そのまま押し倒し互いに熱を求め合う 何度も何度も求め合う… 朝陽の煽情的な表情が俺を高めて行く 「十夜…んっ…もっと欲しい…」 「たくさんあげる。俺の全てを…朝陽っ…んあっ…一緒に地獄へ落ちよう…」 「ふっ…ん…と…や…」 「…んっ」 ポロポロと大粒の涙を流しながら何度も求める朝陽を揺さぶる がっくりと力が抜けた朝陽を車へ運ぶ。車の中でもう一度お互いを求めた。 持ち出した薬瓶の中身を口に含み朝陽にも流し込んだ 誰よりも愛しい朝陽…来世でも会えますように… 「朝陽…またね…」

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