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第237話
十夜side
「ごめん…十夜…僕はもうせいくんのこと何でもないって思ってた…でも…会ったら…抱き締めたくなった…僕はまだせいくんのこと諦められてなかったみたい…」
朝陽の口から聞くその言葉は思ったより俺の胸を締め付けた…苦しい…でも…
朝陽から離れなくちゃ…朝陽のためにはならない…
「俺はわかってたよ」
朝陽に苦しいこと悟られないように目線を遠くへ移した
「だって朝陽俺のこと話してるとき俺をみていないから」
自分で言いながら傷を深く抉る…でも朝陽のため…
「でも僕はちゃんと十夜が好きだよ」
それもわかってたよ。でも朝陽の好きは友達以上ではないものだから。俺とは違うから…
「知ってるよ。でもさ俺に対する好きと星夜に対する好きって違うでしょ」
改めて問う。苦しいことわかっているのに…
朝陽からの返事はない…これは肯定っていうこと
「言葉がでないそれが答え。
美那がいなくなって俺は寂しかった。
一人になりたくなかった。
朝陽もあのとき星夜と一緒にいれなかった。
だからお互い寂しさ埋めたかっただけ。
寂しかったから体重ねてきただけ。
その後は猛る本能を解決するための行為。それがいつのまにか愛情だって勘違いしてた。ただの情でしかなかったのに。俺はもう大丈夫だよ。もう先に進めるから。だから朝陽ももう一度星夜と向き合ってみたら?」
朝陽はそうだったはず。俺は朝陽とずっと繋がっていたかった故の行為だったのだけど…朝陽のことが好きだった…どうしても朝陽に側にいて欲しかった…好きだから…でも朝陽に辛い顔させたくない…
何で星夜に再会しちゃったんだろう…
しなければずっとこうしていられたかもしれない…
でも…俺の気持ちだけを押し付けていたって朝陽の心は俺へは向かない…朝陽だって本当に幸せになれるわけがない…
「でも…せいくんにはもう新しい人がいるんだよ。だから元には戻れない」
切なそうに話す朝陽。あぁやっぱり星夜のことが…少し希望を持ったがでも…星夜と朝陽は良く似ている。
きっと星夜も寂しくて誰かに縋ったのだろう…
「だとしても朝陽が先に進むためには星夜と話さないとならないと思うよ。だから話してみたら?それでもしうまくいかなかったとしたら俺が慰めてやるよ。だって親友でしょ?」
うまくいって欲しい反面俺の元に戻ってきて欲しいという欲に支配されそうになる。
朝陽のことが好きだ…誰にも渡したくない…でも朝陽が心から笑えていないのはとても嫌だ…だから…俺は朝陽を手放す…
「十夜…ありがとう…」
「そんな顔すんな。星夜の番号わかってるんでしょ?」
そんな嬉しそうに笑わないで…
そんな切なそうに見ないで…
「電話したら?」
本当は嫌だけど…俺は頼れる幼馴染みなんだから…しっかりしろ…
「今日はもう遅いから明日にする。十夜…今日は抱き締めて眠ってくれる?」
朝陽の甘い囁き…朝陽はただ心細いだけ…でも…俺の温もりを覚えていて欲しくて抱き締めた
直ぐに朝陽の寝息が聞こえる。幸せそうに寝やがって…こぼれる涙をそのままに朝陽にキスをする…きっと最後のキスになる…
朝陽…ありがとう…とても幸せだったよ。起きたら元の幼馴染みに戻るからね…
そっと目を閉じた…
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