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第239話
朝陽side
朝起きると温かい腕の中にいた。
十夜はやっぱりきれいな顔をしていた
身動ぎしたため十夜が起きてしまう
「ごめん。起こしちゃった」
「ん…だい…じょ…ぶ…おはよ…朝陽…」
いつもの癖だろう額にキスを落とした
いつもと違ってふにゃりと笑った十夜が可愛くてそっと抱き締めベッドから降りた
朝食を準備し十夜を起こしに行くともう仕事モードの十夜がいた。
かっちりシャツを着こなした十夜はやっぱり魅力的で思わず見惚れていた
「なぁに?朝陽。そんなに見つめないでよ。照れる」
「やっぱカッコいいなって思って」
「はぁ…お前なぁ……我慢できなくなるじゃん…」
「ん?何?」
最後は何て言っているのか聞き取れなくて聞き返す
「何でもないよ。飯できたの?」
「うん」
いつもと変わらない朝の光景…このままでいいんじゃないのかな…
幸せだよ…そう思っていたのを見透かしたように十夜が言葉を放つ
「朝陽。星夜と話せよ。約束な」
十夜の真っ直ぐな視線から逃れられず頷いた
「あ…そうだ…これ…」
十夜がクローゼットの中の小物入れの中から光る何かを取り出した
「返しておくから」
「何で…これ…」
見間違う筈がない。せいくんがくれたあのリングだったから…
次第に涙が溜まっていき零れ落ちる。
「どうするかはお前が決めな」
ふっと笑ってそれを僕の掌に乗せ包み込み
握らせた
何で十夜が持っていたのか知らない…
でもあの日のままで静かに輝いていた
その後一緒に食事をして送り出す。
今日は久しぶりのオフでせいくんの番号を表示しては消してを繰り返す
せいくんの名前を表示して意を決して掛けようとするとコールがなる。
1コールが鳴り終わる前に出ていた
「せいくん…」
大好きな人が電話の向こうにいる…そう思うだけで…涙がこぼれていた
愛しい人が僕の名前を呼んでくれた…
兄の店で会うことになった。逸る気持ちを押さえ出かける準備をした
そしてゆっくりと十夜の家のドアを開け駆け出した
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