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第273話
「おかえり」
「あれ?泣いてた?」
カイの頬に伝った涙を舌で拭うと驚いて口をパクパクさせていた。
「カイ」
「ん…」
「俺いなくて平気だった?」
何も答えない…いや…何から話そうか悩んでる様子のカイをみつめそのあと目をそらしながらカイに語りかける
カイはおとなしく聞いていた
「正直…ホッとした…俺じゃなくても大丈夫だとわかったから」
これは本音だ。
みるみるうちに瞳は潤み涙がたまっていく。
とても可愛いと思った。
「カイ。一度離れてみようか?」
これは直ぐにではなくてもそのうちにしないとならないこと。それを聞くと
カイが肩を震わせながらふるふると首を振る
「せいやぁぁぁ…ごめんなさいぃ…」
子供みたいに泣き出すカイのことが少し心配になった。それでも言葉を紡ぐ
「如月さんを抱いたの?」
カイが目線をはずしうなずく
「俺のこと追いかけないで他の人抱いたんだ…へぇ…」
この理由なんてわかってる。
追いかけなかったんじゃなくて追いかけられなかったんだ…きっと立ち上がれなかったんだ
俺に抱いた罪悪感と朝陽さんの元へ戻すための正義感…でも…俺がいなくなったらどうすれば…と先のことを思い不安でたまらなくなって…
自分に好意を寄せている如月さんを抱くことでその不安から逃れようとしたって
あまりにも苦しそうにしているから降参した
「…怒ってないよ。ちょっと拗ねてみただけ。このご飯で許す」
「え?」
驚きと戸惑いの色を浮かべたカイの表情は今までにないくらいおどおどしていて小動物のようだった
「昨日の夜からご飯食べてないからお腹すいてたんだよね。玄関開けたらいいにおいするからもっとお腹すいちゃって。そんな顔しないで。笑って」
カイの瞼にキスを落とし、笑い掛けた
カイはその場でへたりこんだ…
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