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第283話
蘇芳side
霞が来た時の朝陽くんは急によそよそしくなり立ち上がった
こんなこと今までなかったから不思議に思う
「あーあ…華稜院さんと飲みたかったのにな…俺も帰ろうかな…」
霞の表情が気になる。そっと盗み見ると明らかに妖しい色が浮かんでいた。
そもそもここを誰かに紹介するほど稀城はここに来店していないはずだ。
稀城は見た目とは全く違い、とても酒に弱い。外で飲むことなんてほとんどないはずなのだ
霞と稀城はたしかに顔見知りだが店を紹介するほど仲が良かっただろうか…
飲まずに店を後にしようとする霞を呼び止め天音に耳打ちをする
「天音。朝陽くん今日泊めな。何となく嫌な予感がする」
「霞。せっかく来たんだから一緒に飲もうぜ。お前強いのか?」
渋々隣に腰かけた霞の肩を抱く
「蘇芳さん酔ってます?」
「いや。若者と飲みたい気分なんだ。付き合えよ」
「はい」
しばらく他愛な話をしながら酒を煽る
「お前朝陽狙ってんの?」
「いや…事務所の先輩だから仲良くしたいんですよ。華稜院さんってすごい演技派だし色々聞いてみたくて」
「そうか」
嘘だ…目が泳いでいた
「だけど中々一緒に食事とか行けなくて」
「まぁあいつ忙しいからなしょうがないだろ」
「せっかく明日俺もオフだったのにな…」
何で朝陽がオフだって知っているんだ
「朝陽さんって恋人いるんですかね?」
「いるんじゃねぇ?あいつ美人だし性格もいいしな」
明らかに苛立ちを含んだ目だった
「…俺がいるのに…」
「何?」
聞こえていたけど敢えて聞こえないふりをし聞き直した。
朝陽が危ない…また変なのに好かれたのかよ…
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