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第296話
朝陽side
事務所を出て近くを散歩する
この時期は銀杏並木が綺麗に色づいている
落ち葉を踏みしめながらゆっくり歩いた
せいくんが助けてくれた…せいくんが助けるためとはいえ自分の物だと言ってくれた…せいくんが…
どういうつもりなんだろう…どういうつもりもないのかな…
せいくんのあの影がある表情はなんだったんだろう?疲れ?忙しそうだとは思っていたけど…
カイさんと喧嘩でもした?何があったの?聞けなかった…あまり深入りしない方がいいと思った…
霞くんにされたことはショックだったけどそれよりせいくんが来てくれた喜びの方が勝っていた
霞くんのあの顔は本当に申し訳ないけどでも答えられないのに気を持たせたはダメだ…
だったら僕が十夜にしていることって…
「あれ?華稜院先輩?」
久しぶりの呼ばれ方に周りを見渡すと隅田くんがいた
「隅田くん。久しぶり。どうしたの?」
「星のために書いた曲を持って来たんです」
「そっか。さっき事務所で会ったよ」
「会ったんですか?何か話聞いてます?」
「隅田くんのこと聞きに来たって。まだ悩んでるって言ってたよ。カイさんに相談するって」
「雪代さんに?何で?別れたはずだけど」
「え!?別れたってどういう…」
「確か先月別れたんですよ。雪代さんが好きな人できたとかで」
「何で…そんな…」
「俺もよくわからないんですけどあいつ今フリーですよ」
この間見たときはあんなに幸せそうだったのに…何があったんだろう…
「じゃ俺はこれで」
「うん。またね」
混乱したまま現場につく
時間までまだ随分とあったので他の人の撮影を遠目から見ていた
望月くんの熱心な表情。他の人との掛け合い…随分と成長したんだな…
その後の出番になるまで只ひたすら撮影の様子を見ていた
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