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宵闇の向こう側……1

「なずな。指命入ったから」 「はい。行きます」 この店に来てもうすぐ5年になる 中学3年の卒業式の日両親と妹が事故で亡くなった。 高校も決まっていたし新生活に胸躍らせていたそんな日の夕方だった。 高校へ行くのを諦めいろいろなバイトをし一人で暮らしていた そんなある日のことバイト先の先輩と食事に行く機会があった。その先輩があるアルバイトを紹介してくれた。 先輩のうちは裕福だったが社会勉強のため高校生活は自分のバイト代だけで授業料を払い一人暮らしもしていた。 「なずな」 「何?」 「お前もっと稼げる仕事して見る気ない?」 稼げるのは願ったり叶ったりだ。 「稼げるものなら稼ぎたいですけどこの年齢じゃなかなかないんですよね」 「あのさ。俺の叔父がやってる店が募集してて…その仕事……芸能人専門の風俗店なんだよね」 「風俗店?それなら僕は年齢がまだ満たないですよ」 「そうなんだけど。急ぎでその…若いのが欲しいみたいなんだよね…何か大口の男が所望しているようでさ。叔父はその人に大きい借りがあるみたいで…断ることは無理だって。で、俺に依頼が来たんだけど…俺四月で18になっちゃったもんだから相手にOKもらえなくてさ…」 「僕何も経験ないですけど大丈夫ですか?」 「その方がいいみたい。でも…かなりお前に負担がかかるから…」 「構いませんよ」 もういつ死んだって悔いはないから…なのに何故ここまで必死で生きているのかと言うと親父の最初で最後のお願いだから… 病院に駆けつけた時母と妹は既に息を引き取っていたが父はまだ何とか命を繋ぎ止めていた… そんな親父が死ぬ間際微かに笑顔を見せ 「ごめんな…でもなずな…お前は生きてくれ…お願いだから…生きて…」 そしてそのまま息を引き取った 勝手だと思う…俺にそんな願いをするなんて… 両親は施設育ちで元々親なんていなかった…大きな災害で両親とも亡くなっていたそうだ。その人たちの家族もすでにこの世にはいなかった…だから親戚なんていない…そんな俺に生きろなんて…まだ15だった俺には酷な願いだった。 でも何もお願いなんてしたことのない親父の願い…だから必死で生きた…生きるためにはなんだってしようと決めていたからすんなり頷いた 「本当に大丈夫か?」 「相手の方が不快にならないといいんですけど…」 「とりあえず叔父に会わせる」 「はい。お願いします」 そのあとはトントン拍子で決まった。 そして、当日を迎えた。

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