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宵闇の向こう側…13
その後やはりその人は来なくなった。
落胆はなかった。わかっていたから
この店にいれば少しの間だけでも僕だけを求めてくれる人が向こうから来てくれる
毎日気持ちいいことをしてお金貰えてとてもいい場所だ。
ここにいれば寂しくない。寂しいと思う時間なんてない。休みなんていらない…休憩なんていらない…
「なずなくん。ちょっと痩せた?」
「そうかも…」
「甘いの平気?」
「うん。ありがと」
「しっかり食べないと」
こうして食べ物をもらうことが増えたのを見ると自分が思っている以上に痩せているのだろう
元々少食だったのがここ最近は食べる時間も惜しくて予約を詰めていれていたから
「次ここね」
「はい。行ってきます」
「なずな」
「はい」
「お疲れ様」
「え?」
オーナーの含みのある笑顔が気になったが時間が迫ってたので急いで向かう
「malice de l'angeです」
「はい。どうぞ」
「こんばんは。なずなです」
「久しぶり。なずな」
「え?保科さん?」
「最近バタバタで君に会いに来れなかった」
いつもなら次のお客の名前を聞いて向かうのだが今日は聞くの忘れてた。まさかそこにこの人がいるなんて思いもしなかった
「なずな。待たせてごめんね。家へ帰ろう」
頭が追いつかない…何が起こっているの?
「やっと仕事の目処がついたから迎えにきたよ」
「え…本当に?え?聞いてないよ」
「あれ?昨日入金済ませておいたから聞いているかと思ったよ」
そう言えば今日のお客さんは入って間も無くから贔屓にしてくれて居た太客ばかりだった。そのみんなが少し寂しそうにでも嬉しそうにしていたことを思い出す
「幸せになれよ」
そんな言葉も投げかけられていた…あれ…?頰を濡らす暖かなもの…保科さんはそれを見て抱きしめてくれた
「遅くなってごめんな。お前が他の誰かを想っていることは知ってる。その人の代わりでもいい。俺の側に置きたい…代わりになんてならないかもしれないけれどお前が笑っていられるように俺が側にいるから…利用して?」
まさか本当に迎えにきてくれる人がいるなんて思っていなかったからまだ信じられなくて…保科さんへの思いなんてただのお客さんでしかなくて…でも…星夜とどこか重なる保科さん…保科さんの優しさに触れてしまえばもうこの人でいいと思えた。
保科さんにはとても酷だろう…でも…星夜を忘れるためにはこの人じゃないとならないと思う。
「ありがとう…保科さん…うれしい…」
「よかった…」
保科さんの手を取り保科さんの自宅へ向かった。思った以上に大きな邸に圧倒された
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