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宵闇の向こう側…16

保科さんの仕事が忙しくて帰ってこられない日は莉音がずっと離れずに側にいてくれる。 莉音はとても優秀な人だった。 そんなある日の事 莉音の母親が倒れてしまい長期休暇を取ることになる 代わりの執事をつけようとしてくれていたがそれは嫌だった。だってみんな気持ち悪い顔で僕を見てくるから 「いらない。大丈夫だよ。もうある程度ここの事把握できたし。莉音以外はやだ…だってみんな気持ち悪い顔で見てくるから…」 「そうか?…まぁ…極力部屋からでないように」 「わかった。保科さん。早く帰ってきてね」 「わかってる。いってくる」 「はい。いってらっしゃい」 保科さんの言う通りに部屋にこもった。 部屋のなかにはバスルームもトイレもキッチンも揃ってるから特に問題はなかった。 何度か家の人が部屋にやって来るが全てドアを開けないままに対応した。 莉音から部屋の電話に直通で連絡が入るのも毎日の日課だった。 莉音の母親はあまり状態が芳しくなく…まだ戻れないとのことだった 「莉音も無理しないでね。ちゃんとご飯食べて寝れるときは寝るんだよ」 「はい。ありがとうございます。そちらは大丈夫ですか?」 「部屋に篭ってる。保科さんと一緒じゃないと出るのやだし」 「そうですか」 「うん。何かされたら笑えないしね…まぁ自意識過剰だけど…」 「いえ。それくらいした方がいいです。すいません。早く戻れたらいいんだけど」 「莉音の大切なたった一人の家族でしょ。一緒の時間大切にしないと」 「ありがとう。じゃあそろそろ行きますね」 「うん。またね」

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