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宵闇の向こう側…39
「え?えっ!?そんな…まさか…
え?じゃあどうして…」
「保科家は代々20歳になるまでは使用人として仕え色々な仕事を覚えるんだ」
「え?でも莉音のお母さんは女手1つで育てたって…」
「それも事実だ。俺の母親は俺がまだ幼い頃病気で亡くなりその数年後、莉音の母親と俺の父親が出会い莉音ができた。父は結婚を望んだ」
「でも俺の母親はそれを拒んだ」
「何で?」
「自分の身の丈には合わないと言って。認知だけしてもらって、お金の支援は敢えて断ったんです。
甘えてしまいたくないと。
母はとても頑固な人ですから…
でも…父が亡くなったとき兄が寂しくないようにと俺に保科家に行くように言いました
母を一人にしたくなくて始めは断ったのですが…母がどうしてもと言うのでここへ来ました。母は兄を実の息子のように思っていましたから兄の苦しそうな姿が見ていられなかったのでしょう…
幸い俺は父や兄には母と共に幼い頃からよく会いに行っていましたし学校行事には二人ともよく来てくれていた。別々に暮らしている理由も幼い頃から聞かされていた。だからここへ来て不便はあまりなかったです。
保科家の仕事を覚えたり慣れない使用人の仕事もやったり大変なことも多かったのですがその度兄が声をかけてくれました。お陰でなんとかやってこれました
そんな日々が続く中、母が体力の限界を迎えたのか俺が保科家へ来て数ヵ月後倒れました。その後は入退院を繰り返し…」
「そうだったんだね」
「俺も葬儀には行きたかったがどうしても行けなくて…ごめんな…莉音」
「来たら母に怒られてますよ。仕事は投げたしてきたらダメだって…」
「そうかもな…」
「と言うわけなのでなずなさん。もうここは大丈夫なので兄を宜しくお願いします」
「大丈夫なの?」
「俺をなめてもらっちゃ困ります。兄がここでそわそわしている方が気が散ります」
「気が散るって…酷いな…」
「事実でしょ」
「そうだな」
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