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あなたに会えたから 12

莉音side 桔梗が歌手になった。あの歌声が世の中に響くことがとても嬉しかった 桔梗がまだ小学生だった頃こいつは逸材だと思った 本当に歌手になればいいのにとまだ幼い桔梗に託した。 俺も本当は歌手になりたかった。 でも保科家で生活すると決まった時点でその夢は諦めた…いや…本当は自分の歌声なんてカラオケが少し上手い程度の実力だったからプロとしてやっていくことは無理だと感じていた… 桔梗の曲は俺と母を思って作られたんだとすぐにわかって思わず顔が綻んだ 保科家に入って約5年…旦那様…兄が風俗店の男娼を屋敷に迎え入れた。 始めは数人が怪訝そうな顔をしたが兄は真面目で仕事ばかりして来た人だったから兄が愛してしまった人を迎え入れることに反対するものはいなかった。 ただ…数人の男がそれを聞いた時点で目がギラついたのを見逃さなかった。 「旦那様。なずなさまの専属の使用人にしてください。他の者には任せてはいけない。旦那様もお気づきになったでしょう?」 「元からお願いするつもりだった。頼むよ…」 「かしこまりました」 なずな様の名前を聞いた時戸惑った。まさかあの人ではないだろうか…と…俺の初恋の相手…そして…今も忘れられない人… 屋敷に来たその人を見て息を飲んだ…どう見ても…あの人だったから… でもあの人は全く気づかなかった。それもそうだろう…彼の両親が亡くなるずっと前に隣に数日間だけ住んでいただけだから… 俺は引っ越してきたばかりで友人もいなくて学校に馴染めなかった。 この見た目だったり片親だったりで誂われることは多くてもう慣れっ子だった。 下校途中同じクラスだったやつに捕まり汚い言葉を浴びせられていた。 何も言わずただ耐えているととてもきれいな子が歩いてきた 「うわっカッコ悪…数人がかりで一人をなんて」 「何だよ」 「僕に逆らう?君の家どうなるだろうね」 彼の家は大きくてお金持ちだった 「どうなってもいいならどうぞ。僕を好きにすればいい」 「…行こうぜ…」 「大丈夫?えっと…隣に越してきた子だよね?立野くん?」 「うん」 「怪我はない…あぁ…擦りむいてるじゃん。家の人いる?」 「今日は遅くなるって…」 「そっか…じゃうちにおいで。手当てしてあげる」 そのあとご飯までごちそうになって帰宅した。 彼はとても優しくて…こんなに優しくされたことは家族以外はいなかったのですぐに好意を持った。 それから数日登下校を一緒にしてくれたお陰で誂う子はいなくなった… これからもっと仲良くなりたい…そう思っていた矢先。母が解雇された。上司に言い寄られそれを断っただけだったのに… たった数日…家が会社の持ち物だったのでちゃんと挨拶もできないまま引っ越すことになった それ以来の再会だ…気付くはずもないし兄の想い人だ。 手を出すわけにも行かないし想いは閉じ込めるしかない

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